児童自立支援施設運営指針「第Ⅰ部 総論」の要点 時間をかけずに学習!

ここでは、児童自立支援施設運営指針そのものを掲載しました。

児童福祉法等に共通していることは当たり前として、児童自立支援施設の特有のことを色表示にして、短時間で運営指針をマスターすることを目的としています。

ボリュームはありますが、児童養護施設運営指針を読んでいればほとんどが共通の内容で、太字を中心に1度読んみるだけでマスターできることを目指しています。

また児童養護施設と違うところは色表示をしています。

1.目的

・この「運営指針」は、児童自立支援施設における支援の内容と運営に関する指針を定めるものである。社会的養護を担う本施設における運営の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、説明責任を果た
すことにもつながるものである。
・この指針は、そこで暮らし、そこから巣立っていく子どもたちにとって、よりよく生きること(well-being)を保障するものでなければならない。また社会的養護には、社会や国民の理解と支援が不可欠であるため、本施設を社会に開かれたものとし、地域や社会との連携を深めていく努力が必要である。さらにそこで暮らす子どもたちに健やかな育ちを保障する取組を創出していくとともに、本施設が持っている支援機能を地域へ還元していく展開が求められる。
・家庭や地域における養育機能の低下が指摘されている今日、社会的養護のあり方には、養育のモデルを示せるような水準が求められている。子どもは子どもとして人格が尊重され、子ども期をより良く生きることが大切であり、また、子ども期における精神的・情緒的な安定と豊かな生活体験は、発達の基礎となると同時に、その後の成人期の人生に向けた準備でもある。
・この指針は、こうした考え方に立って、社会的養護の様々な担い手との連携の下で、社会的養護を必要とする子どもたちへの適切な支援を実現していくことを目的とする。

2.社会的養護の基本理念と原理

(1)社会的養護の基本理念

①子どもの最善の利益のために

・児童福祉法第1条で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定され、児童憲章では「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、良い環境の中で育てられる。」とうたわれている。
・児童の権利に関する条約第3条では、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されている。
・社会的養護は、子どもの権利擁護を図るための仕組みであり、「子どもの最善の利益のために」をその基本理念とする。

②すべての子どもを社会全体で育む

・社会的養護は、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、公的責任で社会的に保護・養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うものである。
・子どもの健やかな育成は、児童福祉法第1条及び第2条に定められているとおり、すべての国民の努めであるとともに、国及び地方公共団体の責任であり、一人一人の国民と社会の理解と支援により行うものである。
・児童の権利に関する条約第20条では、「家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。」と規定されており、児童は権利の主体として、社会的養護を受ける権利を有する。
・社会的養護は、「すべての子どもを社会全体で育む」をその基本理念とする。

(2)社会的養護の原理

社会的養護は、これを必要とする子どもと家庭を支援して、子どもを健やかに育成するため、上記の基本理念の下、次のような考え方で支援を行う。

①家庭的養護と個別化

・すべての子どもは、適切な養育環境で、安心して自分をゆだねられる養育者によって、一人一人の個別的な状況が十分に考慮されながら、養育されるべきである。
・一人一人の子どもが愛され大切にされていると感じることができ、子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活の保障が必要である。
・社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要であり、社会的養護を地域から切り離して行ったり、子どもの生活の場を大規模な施設養護としてしまうのではなく、できるだけ家庭あるいは家庭的な環境で養育する「家庭的養護」と、個々の子どもの育みを丁寧にきめ細かく進めていく「個別化」が必要である。

②発達の保障と自立支援

・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していくことが必要である。

③回復をめざした支援

・社会的養護を必要とする子どもには、その子どもに応じた成長や発達を支える支援だけでなく、虐待体験や分離体験などによる悪影響からの癒しや回復をめざした専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援も必要となる。
・また、近年増加している被虐待児童や不適切な養育環境で過ごしてきた子どもたちは、虐待体験だけでなく、家族や親族、友達、近所の住人、保育士や教師など地域で慣れ親しんだ人々との分離なども経験しており、心の傷や深刻な生きづらさを抱えている。さらに、情緒や行動、自己認知・対人認知などでも深刻なダメージを受けていることも少なくない。
・こうした子どもたちが、安心感を持てる場所で、大切にされる体験を積み重ね、信頼関係や自己肯定感(自尊心)を取り戻していけるようにしていくことが必要である。

回復は心理療法担当職員の主な業務です。

④家族との連携・協働

・保護者の不在、養育困難、さらには不適切な養育や虐待など、「安心して自分をゆだねられる保護者」がいない子どもたちがいる。また子どもを適切に養育することができず、悩みを抱えている親がいる。さらに配偶者等による暴力(DV)などによって「適切な養育環境」を保てず、困難な状況におかれている親子がいる。
・社会的養護は、こうした子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざして、それに的確に対応するため、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって、ふ子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みである。

⑤継続的支援と連携アプローチ

・社会的養護は、その始まりからアフターケアまでの継続した支援と、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
・児童相談所等の行政機関、各種の施設、里親等の様々な社会的養護の担い手が、それぞれの専門性を発揮しながら、巧みに連携し合って、一人一人の子どもの社会的自立や親子の支援を目指していく社会的養護の連携アプローチが求められる。
・社会的養護の担い手は、同時に複数で連携して支援に取り組んだり、支援を引き継いだり、あるいは元の支援主体が後々までかかわりを持つなど、それぞれの機能を有効に補い合い、重層的な連携を強化することによって、支援の一貫性・継続性・連続性というトータルなプロセスを確保していくことが求められる。
・社会的養護における養育は、「人とのかかわりをもとにした営み」である。子どもが歩んできた過去と現在、そして将来をより良くつなぐために、一人一人の子どもに用意される社会的養護の過程は、「つながりのある道すじ」として子ども自身にも理解されるようなものであることが必要である。

⑥ライフサイクルを見通した支援

・社会的養護の下で育った子どもたちが社会に出てからの暮らしを見通した支援を行うとともに、入所や委託を終えた後も長くかかわりを持ち続け、帰属意識を持つことができる存在になっていくことが重要である。
・社会的養護には、育てられる側であった子どもが親となり、今度は子どもを育てる側になっていくという世代を繋いで繰り返されていく子育てのサイクルへの支援が求められる。
・虐待や貧困の世代間連鎖を断ち切っていけるような支援が求められている。

(3)社会的養護の基盤づくり

・社会的養護は、かつては親のない、親に育てられない子どもを中心とした施策であったが、現在では、虐待を受けた子ども、何らかの障害のある子ども、DV被害の母子などが増え、その役割・機能の変化に、ハード・ソフトの変革が遅れている。
・社会的養護は、大規模な施設養護を中心とした形態から、一人一人の子どもをきめ細かく育み、親子を総合的に支援していけるような社会的な資源としてハード・ソフトともに変革していかなければならない。
・社会的養護は、家庭的養護を推進していくため、原則として、地域の中で養育者の家庭に子どもを迎え入れて養育を行う里親やファミリーホームを優先するとともに、児童養護施設、乳児院等の施設養護も、できる限り小規模で家庭的な養育環境(小規模グループケア、グループホーム)の形態に変えていくことが必要である。
・また、家庭的養護の推進は、養育の形態の変革とともに、養育の内容も刷新していくことが重要である。
・施設は、社会的養護の地域の拠点として、施設から家庭に戻った子どもへの継続的なフォロー、里親支援、社会的養護の下で育った人への自立支援やアフターケア、地域の子育て家庭への支援など、専門的な地域支援の機能を強化し、総合的なソーシャルワーク機能を充実していくことが求められる。
・ソーシャルワークとケアワークを適切に組み合わせ、家庭を総合的に支援する仕組みづくりが必要である。
・社会的養護の役割はますます大きくなっており、これを担う人材の育成・確保が重要な課題となっている。社会的養護を担う機関や組織においては、その取り組みの強化と運営能力の向上が求められている。

3.児童自立支援施設の役割と理念

(1)児童自立支援施設の目的

・本施設は、児童福祉法第44条に基づき、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所又は通所させて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所者について相談等の援助を行うことを目的とする施設である。

・また、本施設は、第48条の2の規定に基づき、地域の住民に対して、児童の養育に関する相談に応じ、助言を行うよう努める役割も持つ。

・本施設における自立支援は、安定した生活環境を整えるとともに、個々の児童について、児童の適性、能力やその家庭の状況等を勘案して、自立支援計画を策定し、児童の主体性を尊重して、生活指導、学習指導、職業指導及び家庭環境の調整を行いつつ、児童への養育や心理的ケア等により、児童の心身の健やかな成長とその自立を支援することを目的として行う。

・生活指導は、児童の自主性の尊重、基本的生活習慣の確立、豊かな人間性・社会性の形成、将来の自立生活のための必要な知識経験の獲得ができるよう行う。
・学科指導は、学校教育法の規定による学習指導要領を準用して行う。
・職業指導は、勤労の基礎的な能力・態度の育成、適性、能力等に応じた職業選択のための相談等の支援を行う。
・家庭環境の調整は、児童の家庭の状況に応じ、親子関係の再構築等を図る。

(2)自立支援の主な目標

・職員は、社会的養護の理念に基づき、次のような目標が達成できるように、支援を行う。

①子どもの自立支援の目標

・健康な心身を育み、人や社会との基本的信頼感を確立し、自己肯定感、自尊心、自主性、自律性等を形成する。
・自他の生命、人格の尊厳、固有の権利を尊重し、自然、社会、人間などあらゆるものと、発展していく動的な調和を図りながら共生できる人間性を育成する。
・よりよい創造的な問題解決に必要な力量、態度及び自立した社会人としての基本的な生活力、生活態度を形成する。
・個性や潜む力を開発しつつ、自己実現を図ることをめざし、自己の不完全さや不健全さを超克しようと自己変革し続ける人間性を育成する。
・行動上の問題の再発防止に向け、自ら行った加害行為などと向き合う取組を通じて自身の加害性、被害性の改善や被害者への責任を果たす人間性を育成する。

②保護者・家族支援の目標

・保護者や家族との信頼関係を確立し、子どもとともに培ってきた保護者や家族との絆を大切にして、子どもの健全育成や家庭環境の調整などを図り、可能な限り早期の家族再統合や家族の養育機能の再生を実現する。

・その家族が抱えている問題や課題に対して、関係機関と連携して支援するなど、その改善や解決を図る。

③地域社会支援の目標

・日常的な地域住民との交流により、相互理解を深め、信頼、連携、支援関係等の構築や発展を図り、地域社会に根ざした開かれた施設を目指す。
・地域住民の社会資源となれるよう、地域住民の福祉ニーズの把握に努め、それに応じた質の高い福祉サービスの提供を推進する。

児童自立支援施設運営指針

4.対象児童

(1)子どもの特徴と背景

・本施設の対象の子どもは、不良行為をなし、又はなすおそれのある子ども及び生活指導等を要する子どもであるが、①虐待など不適切な養育を行った家庭や多くの問題を抱える養育環境で育った子ども、②乳幼児期の発達課題である基本的信頼関係の形成ができていない子ども、③トラウマを抱えている子ども、④知的障害ADHD(注意欠陥多動性障害)、広汎性発達障害などの発達障害のある子ども、⑤抑うつ・不安といった問題を抱えている子ども、などが少なくない。

虐待経験ありが約6割 児童養護施設入所調査

(2)子どもの年齢等

・本施設は、18歳に至るまでの子どもを対象としており、必要がある場合は20歳に達するまでの措置延長をとることができる。
・本施設に入所している子どもは、12歳~15歳の中学生年齢の子どもが多いが、中学卒業した児童も対象であり、受け入れて支援することが求められている。

中学生が多い

5.支援のあり方の基本

(1)基本的な考え方

・子どもへの支援は、子どもを権利の行使の主体者として、その人格を尊重し、相互交流における納得、合意を基本にした支援を中心に展開しなければならない。
・一人一人の子どもの健全で自主的な生活を志向しながら、良質な集団生活の安定性を確保した保護・支援が重要となる。
・施設内での生活という限定された時間的・空間的な枠組みの中で、子どもの自立を支援するための一定の「枠のある生活」とも言うべき保護・支援基盤が重要である。ただし、規則の押し付けや管理のためとなってはならない。
・子どもの発達段階や個別性などに応じた衣食住等を保障し、施設全体が愛情と理解のある雰囲気に包まれ、子どもが愛され大切にされているという実感が持てる家庭的・福祉的なアプローチによって、子どもの基本的信頼感の形成、社会性の発達や基礎学力の獲得、生活自立や心理的自立の発達、アイデンティティの獲得やキャリア願望の発達など「育ち・育てなおし」を行っていく。
・安心感・安全感のある生活の中で、一人一人の子どもを受容し真摯に向き合い、子どもと職員との間で信頼関係を深めながら、自立を支援していく。

(2)保護・養育・教育・心理的ケアのあり方

①生活の中の保護

・施設は、子どもの健やかな成長・発達を阻害し、行動上の問題を引き起こすような不適切な養育環境や社会的な有害環境から、子どもを保護する。
・施設は、自ら希望して入所していない多くの子どもを、安定性のある生活の中で、保護する。
・子どもの示す行動上の問題は、自分自身にある課題の表現でもある。課題をより明確にし、適切な対応を生み出すには、一人で考えるだけでなく、第三者、特に信頼できる大人との対話が役立つ。施設は、こうした新しい関係性を構築する生活の場所でもある。

②生活環境づくり(場づくり)

・子どもが職員の支援を受動的に受ける上下関係ではなく、生徒会などの自主的な活動を活用し、施設全体が相互の人格を尊重した養育・教育を展開するための生活共同体として機能することが大切である。
・多くの子どもは、日常生活場面において、これまでの対人関係や感情体験を背景にして、職員への挑発行動など様々な行動上の問題を表出する場合が多い。
・このような子どもに有効に機能する雰囲気づくりや安心・安全な居場所づくり、人的・空間的・時間的・規範的な面などから構造化された「枠のある生活」など、効果的に影響を与える支援的・教育的・治療的働きかけとしての良質な生活環境(物的・人的・自然環境)を整備する。

③生活の中の養育・教育

・施設における養育・教育は、「人とのかかわりを基本にした営み」であり、「共生共育(共に生活する場の中で行われる生きた言葉・態度などの相互交流によって共に育ちあう)をしていくおとなや他の子ども」の存在が求められる。
・養育・教育は、あるがままの子どもを理屈抜きに純粋に受け入れるなど、良い人間関係によるここちよさの経験・保持へのおとなからの配慮から始まる。
・その息の長い継続的な積み重ねが、「生まれてきてよかった」「生きてきてよかった」という感覚や認識の形成や、自分が背負ってきた境遇など自身の過去を受け入れアイデンティティを獲得することに、重要な役割を果たす。
・子どもとのかかわりの営みにおいては、言語的コミュニケーションは重要であるが、ごく一部であり、言葉にばかり依存しすぎることなく、非言語的コミュニケーションや意識化されないかかわりを大切にする。
・養育・教育の始まりの時期には、思春期の子どもは職員との関係を持ちたがらない態度をとることがある。まず職員が、かかわりあいを避けようとする心情や理屈ではわかっていても納得できない気持ちを理解し、じっくりとかかわりながら子どもが心を開くまで待つという態度で寄り添いながら、よりよき「つながりの契機」を見いだす努力をする。安定した生活の中で、職員や他の子どもとの受容的な交流に努めることが、以後の関係形成に重要な意味をもつ。
・アセスメントにより個々の子どものニーズを把握し、その子どもにあった自立支援計画を策定し、オーダーメイドの養育・教育をしていく。
・子どもの強みや潜在的な能力を伸ばすことも重要である。子どもの良さや強みを見つけてほめること。問題や欠点ばかりに目を向けず、潜在的な可能性を発見しようとするまなざしが、子どもの自尊心の回復に必須の意味を持つ。また、目が行きにくい子どもへのまなざしを忘れてはならない。
・生きるという過程は、「社会化を促進し、規範や慣習に則っていくこと」と「成員の個性の尊重、人格を認めること」など対立する課題について試行錯誤を繰り返し、バランスのとれた解決をしようとする過程でもある。
・子どもは、日常生活で直面する困難な問題を解決していく過程で生じた苦悩、葛藤、熟考、理解、判断などによって、知性、道徳性、情緒などを育んでいく。
・子どもの同士の影響力は非常に大きいため、人格を相互に尊重し、ほめ合う・認め合う・助け合う・励まし合う、切磋琢磨できる良質な集団形成が大切である。
・施設は、子どもの行動上の問題の発生を抑制しすぎることなく、小さな行動上の問題が発生する枠組みを整えて、大きな問題の発生に至らないように早期発見・早期対応による適切な支援を行う。それを通して、子ども自身がその問題の原因や背景について検討し、自己認識を深め、自己責任感を育てる。

④学校教育との連携・協働

・施設は、学校教育と綿密な連携をもちながら、子どもが認められ活躍できる居場所となるように、子どもの学力などに応じた支援を行う。
・施設は、高校進学などで子どもが不利益を被らないよう、施設内学校はもとより、出身学校(原籍校)や関係機関と連携しながら、対応する。
・子どもが日々学び知ることで生じる有能感や達成感を大切にしたい。学んだことが実際の生活で役立つような学校と施設の生活をつなぐ連携が求められる。

⑤生活の中の治療・心理的ケア

・子どもへの心理的ケアは、アセスメントに基づき、個別のニーズに沿った支援目標を立て、子どもや保護者への説明と同意のもとに行われる。
・本施設における心理的ケアは、福祉、心理、教育、医療の協働により、良質な生活環境づくりを行い、施設での生活そのものが治療的な経験となるような生活環境の提供など、日常生活や学校生活及び個別的な心理療法などを有機的に結びつけて行われる総合的なケアである。
・有効性を測定しつつ、見直しを行いながら、継続的に展開していく。
・心理的ケアには、カウンセリング、生活場面面接、認知行動療法、環境療法など様々な方法があるが、個々の子どもの状態に応じて、有効な方法を柔軟に組み合わせ、創意工夫した総合的な心理的ケアを行う。

(3)子どもの支援を担う人

①子どもの支援を担う人

・職員は、よりよい「支援の質」を追求する姿勢を持ち、「共生共育をするおとな」として存在しなければならない。
・子どもの働きかけに対する職員の適時適切な応答・コミュニケーションの積み重ねが、子どもの生きる心の体力を育むのであり、「大切にされている」「理解してくれている」という感じを与える良質な対応が大切である。
・職員は、どのような場面でどのような言語的・非言語的コミュニケーションが必要かについての深い理解と良い技術、子どもと楽しみながら生活できるセンスやバランスのある豊かな生活者としての人間性を持つ必要がある。
・ケアワークの専門性は、現場の生きた実践過程の中で獲得し、たえず評価し見直さなければならない。職員は、常に自らのあり方を問いつづけ、自己変革していくことが求められる。
・そのため、繰り返し研修を重ね、自らの経験や行き詰まりに対して理解や納得を得ることや、スーパービジョン、ケースカンファレンス、自立支援の実践と研究の並列的な推進が必要である。

②職員のチームワーク

・施設における良きチームワークは、職員の心情や養育環境を豊かにするとともに、子どもが人の協調する姿に気づき、おとなへの信頼を学ぶ機会を生む。
・抱え込みを避けるためにも、相互補完的な関係のチームワークが必要である。

(4)家族と退所者への支援

①家族への支援

・施設は、保護者や家族に対して、子どもへの養育が不適切であったとしても、一人の人間として尊重した交流を行うことが重要である。
・保護者や家族なりの努力や配慮をしてきたことへの共感的な理解に努め、信頼関係を構築し、保護者や家族とともに協働して子どもの育成に取り組む。
・保護者や家族を支援する上で、その保護者や家族の問題性はもとより、潜在的な可能性や回復力、あるいは活用すべき強みを把握することも重要である。
・自立支援計画の策定に当たっては、保護者・家族の達成すべき目標は、重点的かつ具体的で、しかも達成しやすい課題であることが望ましい。保護者がその重要性について納得していることが大切である。
・施設は、子どもや保護者・家族の状況を踏まえながら、面会、通信、一時帰宅などの方法を用いて、子どもと保護者・家族との関係を調整する。また、家族との再統合が不可能な子どもには、特別な配慮が必要である。

②退所者への支援

・退所後も、子どもは、スモールステップによって社会適応をしていくことが大切であり、適切な支援の継続した提供が重要である。
・アフターケアについては、入所以前の段階から子どもの支援にかかわってきた関係者や保護者、可能であれば子ども本人を含めて協議を行い、入所中の支援のあり方(保護者や中心的な支援者との関係の維持など)を含め、退所後の支援のあり方(方針や施設と関係機関の役割分担など)などについて検討し、その基盤を作っておくことが必要である。

(5)地域支援・地域連携

①地域支援や社会の理解と連携

・施設は、地域や社会に開かれることとともに、これまでの実践で培ってきた支援のノウハウなどについて、地域住民に還元していくことが求められている。
・子どもの無断外出時における反社会的行動による被害など地域住民に損害を与えることも生じるため、地域連絡協議会などを定期的に開催して、施設運営や利用等についての意見交換を行うなど、地域との連携を深める。

②地域とのネットワーク

・子どもが安心して地域に戻るためには、地域のよりより理解が求められる。日頃から非行少年の本質的な心についてきちんと伝え,正しい理解をしてもらう啓発活動が求められる。

6.児童自立支援施設の将来像

(1)専門的機能の充実等

・虐待を受けた経験や発達障害・行為障害等の障害をもつ子どもなど、特別なケアが必要なケースが増加している。児童自立支援施設の将来像は、平成23年7月の社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会によるとりまとめ「社会的養護の課題と将来像」にあるように、子どもの抱える問題の複雑さに対応し、個別支援や心理治療的なケアなど、より高度で専門的なケアを提供する機能強化が課題である。
・このため、心理士の複数配置など手厚い人員配置を行うとともに、職員の専門性の向上を図る研修を充実しながら、支援の質の一層の向上を図る。
・現状では、中卒や高校生に対応していない施設もあり、年長の対応の難しい児童の自立支援機能の充実に取り組む。
・施設内の分校、分教室の設置等、学校教育への就学義務への対応を図る。
・家庭的な形態である小舎夫婦制や小舎交替制の維持発展を図る。

(2)相談、通所、アフターケア機能

・施設が蓄積してきた非行相談等の知見や経験を活かし、地域の子どもの非行や生活について相談援助などを実施するため、相談、通所、アフターケア機能などの自立支援機能を充実させる。
・子どもの立ち直りや社会的自立のため、家族との交流・関係調整などの支援や、地域社会おけるネットワークなどの資源を活用したサポートを確立させる。

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過去問

保育士試験 令和4年(2022年) 子ども家庭福祉 問13

次の【I群】の施設名と、【II群】の説明を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【I群】
D 児童自立支援施設

【II群】
ア 不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導
等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導
を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行う。

保育士試験 平成25年(2013年) 社会的養護 問39

次の文のうち、「児童自立支援施設運営指針」(平成24年3月 厚生労働省)における「支援のあり方の基本」の記述として適切な記述を〇、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A 一人一人の子どもの健全で自主的な生活を志向しながら、良質な集団生活の安定性を確保した保護・支援が重要となる。


× B 非行の嬌正のために、管理や規則による、規則正しい生活リズムや生活習慣を獲得することが重要となる。

  • 「施設内での生活という限定された時間的・空間的な枠組みの中で、子どもの自立を支援するための一定の『枠のある生活』とも言うべき保護・支援基盤が重要である。ただし、規則の押しつけや管理のためとなってはならない」と、記されています。

○ C 安心感・安全感のある生活の中で、一人一人の子どもを受容し真摯に向き合い、子どもと職員との間で信頼関係を深めながら、自立を支援していく。

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