カリキュラムはランニングコース?

ずっとカリキュラムはややこしいと思っていましたが、過去問ではそこまで微妙な違いを問う問題は出題されていません。

カリキュラムとは

カリキュラムとは、子どもが学んでいく活動履歴のことです。

元々はラテン語の「走る」 (currere) から由来した言葉で「走るコース、走路、ランニングコース」のことをいいます。

つまり、カリキュラムは、目標を達成するためのランニングコースです。

テ・ファリキは、ニュージーランドの幼児教育カリキュラムで、実践者、研究者、マオリの人々の意見を集めて作られたカリキュラムです。

顕在的カリキュラム

顕在的カリキュラムとは、教育目標に沿って、意図的、計画的に編成されたカリキュラムのことです。

例えば、文部科学省が示している学習指導要領は、学年により教えなければならないこと、 一年間の授業時間など詳細に決められていています。

この学習指導要領により年月週毎の時間割が決められ、これは顕在的カリキュラムといえます。

潜在的カリキュラム

潜在的カリキュラムは隠れたカリキュラムとも言われます。

子どもたちが学校の文化としての価値、態度、規範、習慣などを知らず知らずのうちに身に着けていく一連の動きのことをいいます。

例えば、ある時代のある国のある学校では、教師の質問に対して、 女の子が手を挙げてもなかなか指されなかったり、生徒会の委員長は必ず男の子とされた隠れたカリキュラムがあります。

教科カリキュラム

教科カリキュラムとは、学問の体系を基礎として構成される客観的な知識,技術の系統的な学習を目標としています。

例えば、児童教育は、学問体系の獲得を重視する教科カリキュラムを中心に展開されています。

例えば、地理、歴史、公民は別々の科目で構成され、それぞれランニングコースがあります。

融合カリキュラム

融合カリキュラムとは、複数の教科を融合してより大きな学習領域で編成するカリキュラムです。

例えば、地理、歴史、公民はひとつの社会科として編成されます。

コア・カリキュラム

コア・カリキュラムとは、特定の領域を核として教科の統合を目指すカリキュラムです。

例えば、社会科を学習するために、必要に応じて算数や漢字を学習します。

江戸時代が何年続いたかを調べるために、年代の引き算をするため算数を学習し、答えがでたら社会科に戻ります。

経験カリキュラム

経験カリキュラムとは、児童・生徒の経験から発する興味や関心を中心として構成されるカリキュラムです。

幼児期の教育は、経験カリキュラムに基づき展開されます。

キルパトリックの問題解決学習は経験カリキュラムといえます。

カリキュラム・マネジメント

カリキュラム・マネジメントとは、PDCAサイクルを計画的・組織的に推進していくことです。

PDCAは、Plan Do Check Actionの頭文字をとったもので、PDCAサイクルとは計画、実行、評価、改善のサイクルのことをいいます。

例えば、コロナ禍の学校での感染防止対策が必要になりました。

Plan(計画)として、終日マスクを着用し、朝の手洗いを徹底する。

微熱があった場合はオンラインで授業を受けて自宅待機する計画をたてました。

Do(実行)として、計画に沿って実行します。

Check(測定・評価)として、今日の感染対策は有効だったか検討します。

給食時の対策やコミュニケーション不足の問題等も挙げていきます。

Action(対策・改善)として、給食時は児童との距離を一定以上おき、大声をあげないようコミュニケーションはとってよいとします。

改善案は報告書にまとめて学校内で情報共有し、主任会議等で検討します。

制限のある中で何を優先してどうやって取り組むか検討されたことは、“カリキュラム・マネジメント”と言えます。

保育現場のカリキュラム

保育現場のカリキュラムでは、リトミック等の活動が設けられ、保育士の裁量によってグループを編成します。

アプローチ・カリキュラム

アプローチ・カリキュラムとは、協同して遊ぶ姿から協力して目標を目指す姿へとつなげるカリキュラムです。

幼児期に身に付けたことを生かしながら小学校教育へ円滑に移行するときに使われます。

例えば、ある保育所での5歳児は、小学校を訪れて1年生と交流会を行います。

5歳児はダンスを見学し、大きな拍手を送り、またみなで声を掛け合い、自分達のダンスも見せます。

その後はお互いのダンス感想を言い合う時間がもうけられたりします。

教育課程とは?

教育課程とは、カリキュラムとは別物ですが、保育士試験上では同じと考えてよいでしょう。

幼稚園教育要領の教育課程

第1章「総則」
幼稚園は、家庭との連携を図りながら、この章の第1に示す幼稚園教育の基本に基づいて展開される幼稚園生活を通して、生きる力の基礎を育成するよう学校教育法第23条に規定する幼稚園教育の目標の達成に努めなければならない。幼稚園は、このことにより、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとする。

小学校学習指導要領の教育課程

教育課程の編成

小学校学習指導要領では、低学年では生活科の資質・能力が必要とされている。

他教科等の学習においては教科等間の関連を積極的に図り、幼児期の教育及び中学年以降の教育との円滑な接続が図られるよう工夫すること。

過去問

保育士試験 令和5年(2023年)後期 教育原理 問6

次のうち、中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習 指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成 28 年 12 月)の教育課程に関する記述として、 適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A 教育課程とは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応 じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画のことである。

× B 教育課程の編成主体は学級担任である。

○ C 各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成する。

○ D 教育課程を実施・評価し改善していくことが求められる。これが、いわゆる「カリキュラム・マネジメント」である。

(組み合わせ)
A B C D
2 ○ × ○ ○

保育士試験 令和4年(2022年)後期 教育原理 問5

次の文は、「幼稚園教育要領」第1章「総則」の一部である。(   )にあてはまる語句として、正しいものを一つ選びなさい。

教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各幼稚園の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「(   )」という。)に努めるものとする。

× 1. 潜在的カリキュラム
× 2. 経験カリキュラム
○ 3. カリキュラム・マネジメント
× 4. アプローチ・カリキュラム
× 5. カリキュラム・デザイン

保育士試験 令和4年(2022年)前期 教育原理 問6

次の文は、「小学校学習指導要領」(平成29年告示)に示された「教育課程の編成」の一部である。( A )~( C )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

低学年における教育全体において、例えば( A 生活科 )において育成する自立し生活を豊かにしていくための資質・能力が、他教科等の学習においても生かされるようにするなど、教科等間の関連を積極的に図り、( B 幼児期の教育 )及び中学年以降の教育との円滑な接続が図られるよう工夫すること。特に、小学校入学当初においては、幼児期において自発的な活動としての( C 遊び )を通して育まれてきたことが、各教科等における学習に円滑に接続されるよう、( A 生活科 )を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など、指導の工夫や指導計画の作成を行うこと。

【語群】
ア 総合的な学習の時間  イ 生活科
ウ 幼児期の教育  
エ スタートプログラム
オ 自然体験  カ 遊び

4.  A:イ  B:ウ  C:カ

保育士試験 令和3年(2021年)後期 教育原理 問26

次の文は、ある国の就学前教育についての記述である。どこの国のものか、正しいものを一つ選びなさい。

就学前教育は、3~4歳児を中心に幼稚園やプレイセンター、また、0~4歳児を対象とする多様な就学前教育機関において提供されている。また、マオリの言語・文化を教える機関「コハンガ・レオ」も設置されている。子どもの「今、ここにある生活」を重視し、実践者、研究者、マオリの人々の意見を集めて作られたカリキュラム「テ・ファリキ」により幼児教育が展開されている。

× 1. イタリア
× 2. アルゼンチン
× 3. フィンランド
○ 4. ニュージーランド
× 5. シンガポール

保育士試験 令和3年(2021年)前期 教育原理 問24

次の文のうち、「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)」(平成22年)に述べられた幼児期の教育に関するものとして、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A 各教科、道徳、特別活動等といった区別がない。
× B 「~ができるようにする」といった具体的な目標への到達を重視する。

○ C 経験カリキュラムに基づき展開される。

3. A:○  B:×  C:○

保育士試験 令和3年(2021年)前期 教育原理 問29

次の文は、中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28年)の一部である。( A )・( B )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

通級による指導を受ける児童生徒及び特別支援学級に在籍する児童生徒については、一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援が組織的・継続的に行われるよう、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を( A 全員 )作成することが適当である。
(中略)
障害者理解や交流及び共同学習については、グローバル化など社会の急激な変化の中で、多様な人々が共に生きる社会の実現を目指し、一人一人が、多様性を尊重し、協働して生活していくことができるよう、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」と関連付けながら、学校の教育活動全体での一層の推進を図ることが求められる。さらに、学校の( B 教育課程上 )としての学習活動にとどまらず、地域社会との交流の中で、障害のある子供たちが地域社会の構成員であることをお互いが学ぶという、地域社会の中での交流及び共同学習の推進を図る必要がある。

× 1. A:必要に応じて   B:教育課程上
× 2. A:必要に応じて   B:授業
○ 3. A:全員       B:教育課程上
× 4. A:全員       B:授業
× 5. A:ある特定の事例に対して
B:教育課程上

保育士試験 令和2年(2020年)後期 教育原理 問25

次の文の(   )にあてはまる語句として、最も適切なものを一つ選びなさい。

(   )とは、主として学校において、子どもたちが学校の文化ひいては近代社会の文化としての価値、態度、規範や慣習などを知らず知らず身につけていく一連のはたらきのことである。無意図的に、目に見えない形ではあるが、子どもたちに影響を及ぼし、その発達を方向づけていく。

× 1. 融合カリキュラム
× 2. 経験カリキュラム
○ 3. 潜在的カリキュラム
× 4. 顕在的カリキュラム
× 5. コア・カリキュラム

保育士試験 平成31年(2019年)前期 教育原理 問28

次の文は、中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(平成27年12月)の一部である。( A )・( B )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

学習指導要領の次期改訂が目指す理念を実現するためには、教育課程全体を通した取組を通じて、教科横断的な視点から教育活動の改善を行っていくことや、学校全体としての取組を通じて、教科等や学年を超えた組織運営の改善を行っていくことが求められているとしており、教育活動や組織運営など、学校全体の在り方の改善において核となる教育課程の編成、実施、評価及び改善という「( A カリキュラム・マネジメント )」の確立が必要であることが示されている。
こうした( A カリキュラム・マネジメント )は、次のような側面から捉えることができる。

・ 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。

・ 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連の( B PDCAサイクル )を確立すること。

・ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

× 1. ( A )クオリティ・マネジメント
  ( B )インテリジェンス・サイクル
× 2. ( A )クオリティ・マネジメント
  ( B )PDCAサイクル
× 3. ( A )リスク・マネジメント
  ( B )PDCAサイクル
○ 4. ( A )カリキュラム・マネジメント
  ( B )PDCAサイクル
× 5. ( A )カリキュラム・マネジメント
  ( B )インテリジェンス・サイクル

保育士試験 平成30年(2018年)後期 保育の心理学 問95

次の文は、保育におけるグループ編成についての記述である。( A )〜( D )にあてはまる語句の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。

・ 保育士は( A )に応じて、比較的少人数から大きい規模の編成まで、様々な大きさのグループを編成する。

A:年齢・月齢

・ 幼児の主体的な活動である遊びは、他児との関わりの中で深まり、豊かになる。そのため保育士には、( B )を生かしたグループを編成しながら、人と関わる力を育てていくようにすることが求められている。

B:一人一人

・( C )に応じたグループ活動のように保育士の裁量によってグループを編成することもある。例えば、劇や表現遊びのような活動では、技能や力、パーソナリティなどを考慮して編成する。

C:カリキュラム

・ 発達には個人差があるので、グループ内で様々な圧力や緊張が生じ、時には特定の子どもを排除しようとする動きが生ずることがある。こうした( D )を配慮したグループの編成を、保育士は求められることもある。

D:グループダイナミクス

× 1. A:年齢・月齢
B:カリキュラム
C:グループダイナミクス
D:一人一人
× 2. A:グループダイナミクス
B:年齢・月齢
C:一人一人
D:カリキュラム

○ 3. A:年齢・月齢
B:一人一人

C:カリキュラム
D:グループダイナミクス
× 4. A:カリキュラム
B:一人一人
C:グループダイナミクス
D:年齢・月齢
× 5. A:カリキュラム
B:グループダイナミクス
C:一人一人
D:年齢・月齢

保育士試験 平成29年(2017年)後期・地域限定 教育原理 問29

次の文のうち、「経験カリキュラム」の説明として適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

× A  学ぶ内容をそれぞれの分野に分けて系統的に教えるように編成している。

  • 教科カリキュラムについての記述です。

× B  教科ごとに時間割が決められ、学年ごとに習得すべき内容を編成している。

  • 教科カリキュラムについての記述です。

○ C  学習者の活動や体験を中心としながら学びを進めていくように編成している。

× D  子どもの興味関心とのずれが生じやすく、学習意欲を持続しづらい。

  • 経験カリキュラムは子どもの学習意欲を維持しやすいと言われています。

5. A:×  B:×  C:○  D:×

保育士試験 平成28年(2016年)後期 教育原理 問23

次の文は、「幼稚園教育要領」第1章「総則」の第2「教育課程の編成」の一部である。( A )・( B )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

幼稚園は、( A 家庭)との連携を図りながら、この章の第1に示す幼稚園教育の基本に基づいて展開される幼稚園生活を通して、( B 生きる力)の基礎を育成するよう学校教育法第23条に規定する幼稚園教育の目標の達成に努めなければならない。幼稚園は、このことにより、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとする。

× 1. ( A )初等教育  ( B )生きる力
× 2. ( A )初等教育  ( B )確かな学力
× 3. ( A )家庭    ( B )知・徳・体
× 4. ( A )家庭    ( B )確かな学力

○ 5. ( A )家庭    ( B )生きる力

カリキュラムはランニングコース?” への2件のフィードバック

追加

  1. お世話になっております。
    保育士試験 令和4年(2022年)後期 教育原理 問5の回答は× 3. カリキュラム・マネジメントが正解ではないでしょうか?

    1. 上坂様

      お世話になっております。
      ご指摘のとおりカリキュラム・マネジメントが正解です。
      投稿も修正いたしました。
      ご指摘いただいたありがとうございました。

コメントを残す

Powered by WordPress.com. テーマ: Baskerville 2 by Anders Noren

ページ先頭へ ↑

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。