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苦情解決とは?
苦情解決とは、経営者(または事業者)が福祉サービスの内容を継続的に見直し、改善し、質の向上を図っていくための仕組みです。
経営者は、(福祉サービス)利用者(または申出人)からの苦情があった場合には解決に努めなければならなりません。
経営者には「苦情受付担当者」「苦情解決責任者」「第三者委員」の3者が配置されています。
第三者委員は、第三者評価とは別物です。
苦情は誰からが多いの?
運営適正化委員会にあがってきた苦情のサービス分野別内訳は、多い順に以下のとおりです。
- 障害者(1番多い)
- 高齢者
- 児童
- その他

苦情があったらどうすればいいの?
経営者は、苦情があった場合、職員の中から任命された苦情受付担当者が窓口となります。
苦情受付担当者は、申出人の話を的確に整理しなければならず、アルバイト等ではなく職員が配置されています。
ただし、6児童福祉施設は、個人情報保護の観点(施設内虐待など)からも職員以外とします。
第三者評価の5社会的養護施設とは別物です。
苦情解決責任者は、苦情解決の責任主体を明確にするため、施設長、理事等が担います。
まずは申出人と事業者で話し合いによる解決を目指しますが、中立的立場から第三者委員の助言を求めることができます。
第三者委員は、事業者が選考し任命します。
解決できない場合は、申出人が、外部の申立先である都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てます。
運営適正化委員会はあっせん(間にはいって、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと)を行います。
申出人の処遇について問題があるとする場合のみ都道府県知事に通知します。

児童福祉施設の児童も苦情を言えるの?
すべての児童福祉施設で同様のシステムがあります。
施設に意見箱が設置され、児童も申出人として認められています。
以下は苦情解決がいろんな法令に登場していることを認識するためのもので、法律名を覚える程度でよいと思います。
社会福祉法
(社会福祉事業の経営者による苦情の解決)
第八十二条社会福祉事業の経営者は、常に、その提供する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。
(運営適正化委員会)
第八十三条 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であつて、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される運営適正化委員会を置くものとする。
(運営適正化委員会の行う福祉サービス利用援助事業に関する助言等)
第八十四条 運営適正化委員会は、第八十一条の規定により行われる福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該福祉サービス利用援助事業を行う者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。
2 福祉サービス利用援助事業を行う者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。
(運営適正化委員会の行う苦情の解決のための相談等)
第八十五条 運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。
2 運営適正化委員会は、前項の申出人及び当該申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情の解決のあつせんを行うことができる。
(運営適正化委員会から都道府県知事への通知)
第八十六条 運営適正化委員会は、苦情の解決に当たり、当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
(苦情への対応)
第十四条の三 児童福祉施設は、その行つた援助に関する入所している者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設及び児童自立支援施設は、前項の必要な措置として、苦情の公正な解決を図るために、苦情の解決に当たつて当該児童福祉施設の職員以外の者を関与させなければならない。
3 児童福祉施設は、その行つた援助に関し、当該措置又は助産の実施、母子保護の実施若しくは保育の提供若しくは法第二十四条第五項若しくは第六項の規定による措置に係る都道府県又は市町村から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従つて必要な改善を行わなければならない。
4 児童福祉施設は、社会福祉法第八十三条に規定する運営適正化委員会が行う同法第八十五条第一項の規定による調査にできる限り協力しなければならない。
児童養護施設運営指針
4 権利擁護
(5)子どもが意見や苦情を述べやすい環境
①子どもが相談したり意見を述べたりしたい時に相談方法や相談相手を選択できる環境を整備し、子どもに伝えるための取組を行う。
- 複数の相談方法や相談相手の中から自由に選べることを、わかりやすく説明した文書を作成・配布する。
- 子どもや保護者等に十分に周知し、日常的に相談窓口を明確にした上で、内容をわかりやすい場所に掲示する。
②苦情解決の仕組みを確立し、子どもや保護者等に周知する取組を行うとともに、苦情解決の仕組みを機能させる。
- 苦情解決の体制(苦情解決責任者の設置、苦情受け付け担当者の設置、第三者委員の設置)を整備する。
- 苦情解決の仕組みを文書で配布するとともに、わかりやすく説明したものを掲示する。
③子ども等からの意見や苦情等に対する対応マニュアルを整備し、迅速に対応する。
- 苦情や意見・提案に対して迅速な対応体制を整える。
- 苦情や意見を養育や施設運営の改善に反映させる。
- 子どもの希望に応えられない場合には、その理由を丁寧に説明する。
保育所保育指針
第1章
4 保育所の社会的責任
(1)保育所は、子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人ひとりの人格を尊重して保育を行わなければならない。
(2)保育所は、地域社会との交流や連携を図り、保護者や地域社会に、当該保育所が行う保育の内容を適切に説明するよう努めなければならない。
(3)保育所は、入所する子ども等の個人情報を適切に取り扱うとともに、保護者の苦情などに対し、その解決を図るよう努めなければならない。