第三者評価、特に自己評価って馴染みがなく、なんとなくモヤモヤしているものです。
ここでは保育士試験ですので保育所の具体例を元に意味を理解し、他へ応用すると効率的と考えましたので記事にしてみました。

保育所の第三者評価
第三者機関の研修を受けた評価者が、施設ごとに調査や職員へのヒアリングを行たってそれぞれに評価していきます。
評価結果は、第三者機関がワムネットという情報サイト等で公表されます。
サービス提供者はこれを改善に繋げ、利用者はニーズに合った福祉サービスを選べるというものてす。
評価手法は、自己評価や利用者調査(インタビューなど)を行い、報告書を作成して保育所の同意を得た上で公表します。
苦情解決システムの第三者委員とは別物です。
では具体例を挙げてみましょう。以下はワムネットを参考にしたものです。
第三者評価の事例
K保育園長は運営を改善するため、年に1度の第三者評価を受けることにしました。
お金も手間もかかりますが、改善すべきことを把握して、利用者に信頼される保育所にしたいと考えました。
これまで、園児は園庭横の農園の収穫にだけ参加していましたが、第三者機関からの評価により、種まきから参加し、野菜や果物の成長を見て食べるという食育を強化することにしました。
さらに収穫はクラスごとに保護者と体験できるよう工夫するなど、体験活動を保護者と共有する機会を設けました。
保護者同士の交流のほか、保護者が他の子どもにも目を向ける機会となりました。
収穫した大豆では豆腐を作りました。
近隣の「豆腐屋さん」に来てもらい、子どもの目の前で豆腐を作ってもらいました。
取り組み後、子どもは「豆腐屋さん」の前を通るとき自然に
挨拶できるようになりました。
この経験から、職員は地域の力を借りることが重要であるとさらに認識するようになり、通勤途中で出会う周辺住民にも意識するようになりました。
第三者評価は努力義務
お金も手間もかかりますから努力義務です。当然、その結果を公表することも努力義務です。
他施設の第三者評価は?
幼稚園や社会的養護施設、社会福祉施設も考え方は同じです。
ただし、5社会的養護施設だけ
5社会養護施設とは、乳児院・児童養護施設・母子生活支援施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設のことです。
等3年に1度ですが義務化されています。
国連からの指導から始まり、措置制度等である5社会養護施設が規定されました。
苦情解決システムの6児童福祉施設とは別物です。
第三者評価基準について、原則は全国共通ですが、都道府県が独自に定めることもできるとされています。
保育所・保育士の自己評価事例
保育士自身が自身の評価を行うのが「保育士の自己評価」です。
それを元に施設長と保育士との話し合いを通して行われるのが「保育所の自己評価」です。
どちらも自己評価です。
では、保育士の自己評価の事例を挙げてみましょう。

厚生労働省HPより
この自己評価シートは厚生労働省が示しているお手本です。
それを元に保育士同士で話し合い、オリジナルの共通の目標(評価基準)をいくつか立てます。
自己評価の公表とは?
年度末になったら、各々の保育士自身がどれだけ達成されたかランク付けします。
そのランクの平均点が公表されます。
自己評価は努力義務
このような自己評価は努力義務です。毎年必ずやらなければなりません。
その結果を公表することも努力義務です。
保育所保育指針では
ア 保育所は、保育の質の向上を図るため、保育の計画の展開や保育士等の自己評価結果を踏まえ、当該保育所の保育の内容等について自ら評価を行い、その結果を公表するよう努めなければならない。
イ 保育所の自己評価を行うに当たっては、次の事項に留意しなければならない。
(ア)地域の実情や保育所の実態に即して、適切に評価の観点や項目等を設定し、全職員による共通理解を持って取り組むとともに、評価の結果を踏まえ、当該保育所の保育の内容等の改善を図ること。
(イ)児童福祉施設最低基準第36条の趣旨を踏まえ、保育の内容等の評価に関し、保護者及び地域住民等の意見を聴くことが望ましいこと。
他施設の自己評価
自己評価の考え方は社会的養護施設、幼稚園も保育所とほぼ一緒と考えてよいですが、シート自体は施設の特色に合わせてそれぞれ見本があります。
過去問
保育士試験 令和4年(2022年)後期 保育の心理学 問16
次のうち、福祉サービス第三者評価事業に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記 述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 児童養護施設等の社会的養護関係施設については、福祉サービス第三者評価を受けることが義務
付けられている。
○ B 福祉サービス第三者評価事業の普及促進等は、国の責務となっている。
× C 福祉サービス第三者評価を受けた結果は、市町村が公表することになっている。
- 第三者機関が公表します。
× D 福祉サービス第三者評価事業とは、公正・中立な福祉事務所が専門的・客観的立場から福祉サー
ビスについて評価を行う仕組みのことである
- 第三者機関が評価します。
保育士試験 令和3年(2021年)後期 保育の心理学 問92
次のうち、保育所の自己評価に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 保育所の自己評価は、保育士等の自己評価結果に基づいて、施設長と職員との話し合いを通して行われる。
× B 保育士等の自己評価において課題になっていることなどを、短期間に全て改善するように進めることが大切である。
○ C 職員間で共有する資料には、保育記録をはじめ、保育所が実施した様々な調査結果、あるいは保育所に寄せられた要望や苦情等も含まれる。
○ D 保育の内容等の評価の公表を通して、保護者及び地域住民等から理解を得るとともに、評価に関する意見を聴くことが望ましい。
保育士試験 令和3年(2021年)後期 社会的養護 問37
次のうち、社会的養護関係施設における第三者評価及び自己評価の実施に関する記述として、適切なものを一つ選びなさい。
× 1.社会的養護関係施設は、第三者評価を5か年度毎に1回以上受審しなければならない。
× 2.第三者評価は、各施設が独自に作成した基準を用いて実施される。
× 3.利用者調査は、任意での実施とされている。
○ 4.ファミリーホーム及び自立援助ホームの第三者評価の受審は努力義務とされている。
× 5.社会的養護関係施設は、第三者評価の受審年に限り、自己評価を行わなければならない。
正解は 4
保育士試験 令和元年(2019年)後期 社会的養護 問39
次の文のうち、児童養護施設における第三者評価および自己評価に関する記述として適切なものを一つ選びなさい。
○ 1.第三者評価の受審が義務づけられている。
× 2.第三者評価は、4か年度毎に1回以上受審しなければならない。
- 第三者評価は、3年に1回受けることが義務付けられています。
× 3.自己評価の結果の公表は任意である。
- 自己評価の結果の公表は任意ではなく「義務」とされています。
× 4.自己評価は、2か年度毎に1回行わなければならない。
- 自己評価は、毎年行うように定義されています。
× 5.第三者評価における利用者調査の実施は任意である。
- 第三者評価における利用者調査の実施は任意ではなく「義務」とされています。
正解は 1
保育士試験 令和元年(2019年)後期 社会福祉 問75
次の文は、保育所のサービス評価に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 保育所は、福祉サービスの自己評価を行うなど、福祉サービスの質の向上に向けて努力することが義務づけられている。
○ B 保育所は、定期的に第三者評価を受審するよう努めなければならない。
× C 保育所の第三者評価を行うのは、市町村自治体である。
- C 第三者評価を行うのは市町村自治体ではなく、公正・中立な第三者機関となっています。
○ D 保育所の公表された自己評価や第三者評価受審の結果は、利用者がサービス選択を行うための情報として活用される。
1.A:○ B:○ C:○ D:○
2.A:○ B:○ C:× D:○
3.A:○ B:× C:○ D:×
4.A:× B:○ C:× D:○
5.A:× B:× C:○ D:×
正解は 2
保育士試験 平成30年(2018年)後期 社会福祉 問74
次の文は、福祉サービスの第三者評価事業に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 評価調査者として満たすべき要件の1つは、評価調査者養成研修を受講し修了していることである。
○ B 第三者評価機関が評価の結果を公表する際は、受審した事業所の同意を得る必要がある。
○ C 福祉サービス第三者評価事業の普及促進等は、国の責務である。
1.A○ B○ C○
2.A○ B○ C×
3.A○ B× C×
4.A× B○ C○
5.A× B× C○
正解は 1
保育士試験 平成29年(2017年)後期・地域限定 社会的養護 問35
次の文は、社会的養護の施設等における第三者評価に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 第三者評価を受審するに当たっては、あらかじめ、第三者評価の評価基準に基づく自己評価を行うことが求められている。
○ B 第三者評価を受審する義務がある施設においては、第三者評価を3か年度に1回以上受審しなければならない。
○ C 児童自立生活援助事業( 自立援助ホーム )における第三者評価の受審は、努力義務である。
1.A:○ B:○ C:○
2.A:○ B:× C:○
3.A:× B:○ C:○
4.A:× B:○ C:×
5.A:× B:× C:×
正解は 1
保育士試験 平成29年(2017年)前期 社会福祉 問80
次の文は、社会福祉における利用者の保護に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ A 「社会福祉法」において、利用者保護の観点は、地域福祉の推進と並んで明確に規定されている。
× B 第三者評価制度の意義は、サービス提供者自身が問題点を明らかにし、それを自主改善するというよりは、第三者評価機関が問題点を公表して指導・介入することによりサービスの質を向上させるということである。
- 第三者評価機関は指導・介入はせず、評価の実施及び結果の公表を行う機関のため、誤った記述です。第三者評価を受けることで、サービス提供事業者はサービスを客観的に振り返り、どのようにしたら質の向上ができるか検討することができます。
× C 第三者評価制度は、社会福祉改革における利用者本位の潮流の中から新しい制度として生み出され、すべての児童福祉施設が実施することを「児童福祉法」で義務付けている。
- すべての児童福祉施設に義務付けられているわけではないため、誤った記述です。「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」の中で、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設では「業務の質の評価等」に規定されています。
○ D 福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)は、苦情解決制度の利用援助を行う。
1.( A )○ ( B )○ ( C )× ( D )×
2.( A )○ ( B )× ( C )○ ( D )○
3.( A )○ ( B )× ( C )× ( D )○
4.( A )× ( B )○ ( C )○ ( D )×
5.( A )× ( B )× ( C )○ ( D )○
正解は 3
保育士試験 平成26年(2014年) 児童家庭福祉 問42
次の文は、児童の権利擁護に関する記述である。適切な記述を選びなさい。
○ 1.平成9年の「児童福祉法」改正では、第26条の措置については、児童相談所が都道府県知事へ報告を行うにあたり、その報告書には措置についての当該児童及び保護者の意向等に関し、参考となる事項を記載することが規定された。
○ 2.「児童虐待の防止等に関する法律」第1条の目的では、「児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資する」と謳われている。
○ 3.「社会的養護関係施設における第三者評価及び自己評価の実施について」(平成24年3月 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長及び厚生労働省社会・援護局長通知)によると、社会的養護関係施設の第三者評価基準について、原則は全国共通であるが、都道府県が独自に定めることもできるとされている。
○ 4.平成20年の「児童福祉法」改正に伴い、被措置児童に対する施設職員による虐待等の禁止とともに、そのような事態が発生した場合の対応方法も定められ
正解は 1 , 2 , 3 , 4
保育士試験 平成26年(2014年) 社会福祉 問76
次の文は、福祉サービスの第三者評価事業に関する記述である。適切な記述を選びなさい。
× 1.児童福祉分野の福祉サービス第三者評価事業では、民生委員・児童委員の評価を組み入れることが特別に定められている。
- 第三者評価に民生委員・児童委員の評価を組み入れる事は定められていません。
○ 2.福祉サービス第三者評価事業は、サービス提供者が事業運営の具体的な問題点を把握し、サービスの質の向上に結び付けるとともに、利用者が適切にサービス選択を行うための情報提供も目的としている。
○ 3.保育所の第三者評価事業は、全国社会福祉協議会が設置した福祉サービスの質の向上推進委員会(以前の評価基準等委員会)が策定した保育所版福祉サービス第三者評価基準ガイドラインに基づき都道府県や第三者評価機関で工夫を加えながら実施している。
○ 4.「社会福祉法」では、社会福祉事業経営者に対して、自ら提供するサービスの評価を行うよう促すと同時に、国に対しても、公正かつ適切なサービス評価を実施するように要請している。
正解は 2 , 3 , 4
保育士試験 平成23年(2011年) 社会福祉 問15
次の文は、福祉サービスの第三者評価事業に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
○ 1.福祉サービスの第三者評価事業とは、社会福祉基礎構造改革において、その理念を具体化する仕組みの一つとして位置付けられた。
○ 2.福祉サービスの第三者評価事業では、主に、福祉サービス提供体制の整備状況と取り組みについて専門的・客観的な立場からの評価が行われる。
○ 3.福祉サービスの第三者評価事業に従事する評価調査者は、評価調査者としての業務を行うための条件として評価調査者に対する研修を受講することになっている。
○ 4.福祉サービスの第三者評価事業結果の取り扱いについては、第三者評価機関と都道府県推進組織において、それぞれ「福祉サービス第三者評価結果の公表ガイドライン」に基づき公表している。
× 5.児童福祉施設は、福祉サービスの自己評価と第三者評価を受けることが「児童福祉法」で義務付けられている。
- 「児童福祉法」ではなく、「社会福祉法」第78条は、「社会福祉事業の経営者は、自己評価の実施等によって自らの提供する福祉サービスの質の向上に努めなければならない」と自己評価について努力義務を規定しています。なお、社会的養護施設(児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・情緒障害児短期治療施設・児童自立支援施設)は平成24年度から3年に1度の受審が義務化されました。
正解は 5
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