ペスタロッチの優しさがわかる絵画でイメージしよう!

幼いころから

ペスタロッチは、村で牧師をしている祖父のところへよく遊びに行っていました。

町の子どもたちは裕福でみんな学校に行って勉強しているのに、村の子どもたちは貧しく十分な学校教育を受けることができないまま働いていることに気付きました。

ペスタロッチは幼心に、この人たちを救いたいと思うようになっていったのです。

ペスタロッチ

ルソーに魅せられる大学時代

ペスタロッチは当時話題だったルソーの思想に出合いました。

ルソーの「自然に帰れ」という主張は青年ペスタロッチの魂をゆさぶられ、ルソーの精神にしたがって社会を良くしたいと考えるようになりました。

ノイホーフ

ペスタロッチは結婚後、土地を買って農場経営に着手し、ノイホーフ(新しい農場の意)と名づけました。

ある日、凶作で村に貧民の子どもたちがあふれてしまいましたが、ペスタロッチは自分の農場経営もうまく行っていないのに、その子どもたちをひきとりました。

ペスタロッチ

ペスタロッチはそこで貧民学校を始めました。

隠者の夕暮

そして、多くの貧しい人々も教育を通して進歩できるという考えを『隠者の夕暮』として書きました。

著書 隠者の夕暮れ
名言「人間、玉座に坐っている人も、あばら家に住んでいる人も、同じであるといわれるときの人間、つまり人間の本質、それはいったい何であろうか」

要約:教育というものは、相手が身分の高い人だろうが賤しい人だろうが、同じものであるはずです。なぜなら、教育とは人間をつくる仕事だからです。すべての人間は、その本性の奥底に、共通する素質と力を持っているはずです。

リーンハルトとゲルトルート

ペスタロッチの貧民学校は経営がうまくいきませんでした。

あるひゲルトルートという女性が現れ、ペスタロッチの慈善事業に心を打たれ、まったくの無給でペスタロッチのもとで働きました。

著書『リーンハルトとゲルトルート』に登場する理想の女性像ゲルトルートは、彼女がモデルだといわれています。

それは生活の糧を得る必要に迫られての執筆でもありました。

メトーデの実践

その頃、フランス軍の働きかけによって、スイス政府もようやく孤児のための学校を設立することに着手しました。

そして、ペスタロッチがその役に任じられました。

これが、彼が先頭に立って進めた実験の最初のものでした。

ペスタロッチは、教育の基礎を子どもの直観に置くことを提唱するとともに、それを実践しました。

直観を構成する要素として、「数」、「形」、「語」をあげ、この直観の三要素に着目した教授法を考案しました。

例えば、犬とはどんな生物かの授業では、普通は小さくて白い生物だと教えます。

しかし、直観教授の場合は、子ども達に犬に触れてもらい、かわいい、ふわふわしているなどの子ども自身が感じたものが、その子どもにとっての犬だと教えます。

事物に対する直観からひらめきを発展させていく学習方法です。

著書「ゲルトルート児童教育法」

ここでペスタロッチは自分が考えた教育方法をメトーデと名づけ、それを広めるために「ゲルトルート児童教育法」を書きました。

この本を読んだ人がたくさんペスタロッチのもとにやってきて、ペスタロッチの教育についての考えや方法を学びました。

こうしてペスタロッチは ヨーロッパで有名になりました。

子ども達が家族のように

フランス革命が勃発し、衝突が起こったスイスのシュタンツでは、たくさんの乞食や泥棒をする孤児があふれました。

子どもたちは大人を信用できなくなっていて、ペスタロッチがどんなに子どもたちに優しくしても、誰もわかってくれませんでした。

でもペスタロッチの暖かい愛情に包まれているうちに、子どもたちの氷のような心がしだいに溶けてきました。

ペスタロッチと子どもたちが家族のようにうちとけあい、すばらしい関係となり、ペスタロッチの喜びは相当なものでした。

しかし、わずか半年で孤児院は閉鎖させられ、フランス軍の病院にされることになったのです。

著書「シュタンツ便り」

著書「シュタンツ(地名)便り」

気落ちしたペスタロッチは血を吐いてしまい、 どこかで休養しすることになり、その休養地で孤児院のことを書いたのが、有名な 『シュタンツだより』です。

その後、学校を開くことになりました。

フレーベルヘルバルトもこの学園に来てペスタロッチから多くのことを学びました。

この学校ではペスタロッチはあまり授業をしないで、本を書いたり教員養成をしたりしました。

ペスタロッチは自分が考えた教育方法をもっと世界中に広めることで、世界中の子どもたちが楽しく生き生きと学校で学べるようにしてやりたいと願っていたのです。

著書「白鳥

ペスタロッチが望んだのは、すべての子どもの教育でした。

生活が「陶冶する」とは、生活そのものが人間を発達させることをいいます。

人間に本来備わっている3つの根本的な能力を下記のに分け、それぞれを教育し、これらを統一する力が愛でした。

  1. 心情的根本力(心):道徳教育
  2. 精神的根本力(頭):知識教育
  3. 身体的根本力(手):技術教育

ちなみに、「生活」がキーワードとなる人物は、デューイ倉橋惣三がいます。

過去問

保育士試験 令和3年(2021年)前期 教育原理 問25

次の【Ⅰ群】の記述と、【Ⅱ群】の人物を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】

B  スイスに生まれ、近代教育に重要な影響を与えた教育思想家・教育者。著書『隠者の夕暮』で、教育の場として家庭を重視した。「生活が陶冶する」という名言でも知られている。

【Ⅱ群】
ア  コメニウス(Comenius, J.A.)
イ  ルソー(Rousseau, J.−J.)

ウ  ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)
エ  フレーベル(Fröbel, F.W.)

保育士試験 令和元年(2019年)後期 保育原理 問17

次の【Ⅰ群】の語句と最も関連の深い人名を【Ⅱ群】から選び、それぞれを結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】

A  消極的教育
B  メトーデ
C  ガーベ(恩物)
D  性格形成学院

【Ⅱ群】
ア  オーエン(Owen, R.)
イ  フレーベル(Fröbel, F.W.)
ウ  ルソー(Rousseau, J.-J.)

エ  ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)

保育士試験 令和元年(2019年)後期 教育原理 問24

次の文の著者として、正しいものを一つ選びなさい。

政府はシュタンツにある尼僧達の使用している建物を私の住居に指定してくれた。しかし、この建物は私が到着した時には、まだ完成していなかったし、また、多数の子供達を収容する孤児院に適するようには作られていなかった。(中略)
この子供達の大部分の入所当時の悲惨な有様というものは、人間の性情を全く無視したための当然の結果であった。(中略)怠惰な不活発さ、精神的素質や肉体的技能の訓練不足、これがどの子供にも見られる一般的な傾向であった。ABCを知っている子どもは十人に一人もいなかった。ましてや、その外の学校教育とか、教育的陶冶方法についてはいうだけ野暮であった。 

× 1. フレーベル(Fröbel, F.W.)

× 2. トマス・モア(More, T.)

× 3. ピアジェ(Piaget, J.)

× 4. エレン・ケイ(Key, E.)

○ 5. ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)

保育士試験 平成29年(2017年)前期 保育原理 問7

次の【Ⅰ群】の記述と【Ⅱ群】の人名を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】

C  著書である『隠者の夕暮』(1780年)は、「玉座の上にあっても木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間」という書き出しで始まり、ヒューマニズムに満ちた人間観が描かれている。

【Ⅱ群】
ア エリクソン(Erikson,E.H.)
イ ペスタロッチ(Pestalozzi,J.H.)
ウ モンテッソーリ(Montessori,M.)
エ シュタイナー(Steiner,R.)
オ フレーベル(Frӧbel,F.W.)

保育士試験 平成26年(2014年) 教育原理 問24

問題次の【Ⅰ群】の記述を【Ⅱ群】の著者名と結び付けた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】

B 私は彼らとともに泣き、彼らとともに笑いました。彼らは世界も忘れ、シュタンツも忘れて、私のもとにおり、私もまた彼らのもとにおりました。彼らのスープは私のスープであり、彼らの飲み物は私の飲み物でした。私には何もなく、所帯もなく友人も召使も誰も私の身のまわりにはいませんでした。私にはただ、子供たちだけがおりました。彼らが健康なときは、私は彼らの真ん中にいました。彼らが病気のときは、私は彼らのそばにいました。私は夜は一番最後にベットに就き、朝は一番早く起きました。私はベットのなかでも彼らが寝つくまで彼らとともに祈り、そして教えました。彼らはそうすることを望んだのです。二重感染の危険にさらされながら、私は彼らの着物や身体のほとんどどうしようもない汚れの世話をしてやりました。

  • ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H. 1746-1827)の著書「シュタンツだより」の一部です。

【Ⅱ群】
ア カント(Kant, I.)
イ デューイ(Dewey, J.)
ウ ルソー(Rousseau, J.-J.)

エ ペスタロッチ(Pestalozzi, J.H.)
オ オーエン(Owen, R.)

保育士試験 平成23年(2011年) 教育原理 問123

次の文は、ペスタロッチ(Pestalozzi,J.H.)に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。

○ 1.初期の著作『隠者の夕暮』の冒頭で、「人間、玉座に坐っている人も、あばら家に住んでいる人も、同じであるといわれるときの人間、つまり人間の本質、それはいったい何であろうか」と述べている。彼は、すべての人間は、その本質においてなんら変わることなく平等であり、尊ばれる存在であると考えた。

○ 2.彼は、人間に本来備わっている根本的な能力を、精神力(頭)、心情力(心)、技術力(手)の3つに分け、この3つの要素を調和的に発展させる教育を理想とした。

○ 3.彼は、教育の基礎を子どもの直観に置くことを提唱するとともに、それを実践した。彼は、直観を構成する要素として、「数」、「形」、「語」をあげ、この直観の三要素に着目した教授法を考案したが、それは直観教授と呼ばれる。

○ 5.彼は、「生活が陶冶する」という有名な言葉を残した。

ペスタロッチの優しさがわかる絵画でイメージしよう!” への1件のフィードバック

追加

コメントを残す

Powered by WordPress.com. テーマ: Baskerville 2 by Anders Noren

ページ先頭へ ↑

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。