ゲゼルの遺伝論!狼に育てられた少女は架空の話?!

それにしても試験にでるような学者さんは成績優秀の優等生ばかりです。

遺伝説(生得説、成熟優位説)とは?

ゲゼルの生い立ち

ゲゼルは5人兄弟の長男で、両親はカメラマンと教師で、どちらも教育に関心を持っていました。

ゲゼル

弟妹たちの成長を見守り、面倒を見てやることで彼の中に子どもへの関心が芽生えていきました。

ゲゼルは教師になるために、知的障害児のための学校に勤務したことにより、知的障害児の研究に興味を持ち始めました。

研究にうちこみ、最新の技術を使ってビデオやカメラを活用しました。

また子どもたちの邪魔をすることなく彼らを一方的に観察することのできるゲゼルドーム、今でいうマジックミラーを備えた実験観察室も開発しました。

自身の研究の中で数多くの子どもを研究しましたが、その中には直接は見ていませんが、『狼に育てられた少女アマラとカマラ』も含まれます。

直接見てないというので、少女が実在するかどうかわかりません。

生まれか育ちか?

ゲゼルは心理学者として、「生まれか育ちか」論争の中でその両者の重要性を認めていました。

そして知的障害を育ちが悪いからとするべきではないと考えました。

また右利き、左利きのような利き手や気質のような人間行動も遺伝しうるという見解を採りました。

双子実験

ゲゼルは、一卵性双生児の乳幼児を対象に、階段上り学習の実験を行いました。

この実験において、双子の片割れであるAは、生後46週目から階段上りの訓練を受け、もう片方のBは生後53週目から階段上りの訓練を受けました。

すると、双子が生後53週目の時点では、Aの方が階段を早く登ることが出来ましたが、Bも階段上りの訓練を十分に受けると、AとBの間に差は見られませんでした。

つまり、ある程度成熟した後に訓練をしたBの方が、Aに比べて訓練の時間が短かったにも関わらず、同程度の成績を収めたのです。

レディネスを積極的に形成しよう!

ゲゼルは、遺伝的に組み込まれたプログラムによる心身の成熟(レディネス)が成り立つ時期に、自然にできるようになる「遺伝説(生得説、成熟優位説)」を主張しました。

遺伝説によれば、発達は学習や経験によらず、神経系の成熟によって進み、教育や訓練は早ければ早いほど良いわけではなく、成熟した状態になっていることが必要だといいます。

日本では、レディネス観により、待ちの教育が行われていたときがありましたが、現在では積極的にレディネスを形成するようになっています。

さらにレディネスを形成するためには、遺伝によるものと環境によるものの両方が関係していると考えるようになってきています。

ついでに親準備性とは?

ゲゼルとは関係ありませんが、準備つながりで、親準備性も覚えましょう。

親準備性とは、親になるための心理的な準備状態や態度などをいいます。

環境説とは?

遺伝論に対して環境説とは、後天的に与えられた環境によって変化するとされ、特に人から誉められたり叱られたりすることにより変化するとしました。

行動主義の心理学を創設したワトソンは、自分に子どもを預けてくれるならば、どんな職業にでもしてみせると言ったことで有名です。

ワトソン

ワトソンのアルバート坊やの実験

ワトソンの実験で、アルバート坊やという有名な実験があります。

アルバートという赤ちゃんを借り、赤ちゃんがウサギに触るたびに、泣くまでハンマーで騒音を立てました。

やがてアルバートはウサギを見るだけで泣くようになります。

アルバート坊や

輻輳説とは?

輻輳説とは、遺伝要因と環境要因が寄り集まり、足し合わされて、発達が進んでいくとみる説です。

シュテルンが提唱しました。

相互作用説とは?

相互作用説とは、遺伝と環境の影響は足し算のように単純なものではなく、相互作用的に影響しあうという考え方です。

ジェンセンの環境閾値説とは?

ジェンセン環境閾値説とは、相互作用説のひとつで、遺伝要因と環境要因が寄り集まり、足し合わされて、発達が進んでいくとみる説です。

閾値とは、必要最小限という意味です。

各特性が発達するかどうかは、その特性が発達するような環境にあるかということが大きく関係します。

例えば身長や体重は、極端に不適切な環境でないかぎり発達します。

知能はある程度の環境があれば発達しますし、学業は、環境が整えば整っている程発達します。

少し特殊な能力ともいえる絶対音感は、きわめて稀な環境や特別な教育訓練によって、はじめて発達します。

ジェンセンの環境閾値説

過去問

保育士試験 令和5年(2023年)前期 保育の心理学 問1

次のうち、発達についての考え方に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×と した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A ゲゼル(Gesell, A.L.)は、一卵性双生児の階段登りの実験の結果から、発達は基本的に神経系の成熟によって規定されるとした。

× B ワトソン(Watson, J.B.)は、成育初期に与えられたある種の経験が、後年の生理的・心理的な発達に消しがたい行動を形成させる期間として、臨界期の存在を明らかにした。

  • ジャクリーンが明らかにしました。

× C 学習の成立にとって必要な個体の発達的素地、心身の準備性のことをレジリエンスという。

  • レディネスといいます。

× D 発達段階とは、ある時期の心身の機能や構造が前後と異なるというような量的な変化を想定して区切ったものである。

(組み合わせ)
A B C D
3 ○ × × ×

保育士試験 令和5年(2023年)前期 保育の心理学 問2

次のうち、子どもの発達と環境に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とし た場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

× A シュテルン(Stern, W.)は、発達における社会的・文化的環境の影響を重視しており、発達は環境のもつ社会、文化、歴史的な側面が個人との相互作用によって個人の中に取り入れられる過程 であるとした。

  • シュテルンは輻輳説を提唱しました。設問は相互作用説です。

○ C ジェンセン(Jensen, A.R.)は、個々の特性が表れるのに必要な環境的要因には、特性ごとに固有な最低限度(閾値)があるとした。

(組み合わせ)
A B C D
5 × × ○ ○

保育士試験 令和4年(2022年)後期 保育の心理学 問13

次のうち、親になることに関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場 合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A 親準備教育には、親になる直前の妊婦を対象としたものや、小中高生など若い世代を対象とした
ものがある。

○ B 胎動が感じられるようになると、母親は子どもの身体を具体的にイメージしたり、子どもの心の状態やパーソナリティについて様々な想像をめぐらしたりするなど、妊娠期から子どもとの相互作用に向けて心の準備を整えていく。

保育士試験 令和4年(2022年)前期 保育の心理学 問2

次のうち、「ある行動や能力の発現には、その特質がもつ遺伝的なものと環境の最適さが関係 する」という記述に関する用語として、適切なものを一つ選びなさい。

○ 1 環境閾値説
2 輻輳説
3 遺伝説(生得説)
4 生態学的システム論
5 環境説(経験説)

保育士試験 令和4年(2022年)前期 保育の心理学 問12

次のうち、子育てに関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ D  親準備性とは、まだ乳幼児を育てた経験のない思春期・青年期の人に対する、子育てに関する知識や技能、子どもへの関心、親になる楽しみなど、親になるための心理的な準備状態や態度などをいう。

保育士試験 令和2年(2020年)後期 保育の心理学 問77

次のA~Cのうち、発達に関する記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

× B 相互作用説によれば、遺伝要因と環境要因が寄り集まり、足し合わされて、発達が進んでいくとみる。

  • 相互作用説とは、遺伝と環境の影響は足し算のように単純なものではなく、相互作用的に影響しあうという考え方です。ジェンセンの環境閾値説が有名です。

保育士試験 平成31年(2019年)前期 保育の心理学 問81

次の【Ⅰ群】の記述と【Ⅱ群】の人名を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】

A  生得的に内在する能力が、時期に応じて自然に展開し、発達すると考える。

【Ⅱ群】
ア マッコール(McCall, R.B.)
イ ゲゼル(Gesell, A.L.)
ウ ブロンフェンブレンナー(Bronfenbrenner, U.)
エ エリクソン(Erikson, E.H.)
オ バルテス(Baltes, P.B.)

保育士試験 平成30年(2018年)前期 保育の心理学 問84

次の説明及び図は、環境閾値説に関するものである。( ア )~( エ )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

ジェンセン( Jensen,A.R. )は、心身の諸特質の( ア 、遺伝的可能性)が顕在化するのに必要な( イ 、環境条件)の質や量は、その特性によってそれぞれ違いがあり、各特性に固有な一定の水準( 閾値 )があるという見解を述べている。
その見解によると特性Aは、極端に不適切な環境でないかぎり、ほぼ完全に発達の可能性が現れる。
特性Bは、( ウ、知能検査の成績 )などがこれにあたり、中程度の環境条件が閾値となるものである。
特性Cは、環境条件にほぼ比例して発達の可能性が顕在化するもので、( エ、学業成績 )などがこれに当たる。
特性Dは、きわめて可能性が好適的な環境条件や特別な教育訓練によって、はじめて顕在化するものである。

1. ( ア )遺伝的可能性  ( イ )環境条件  ( ウ )学業成績     ( エ )知能検査の成績

2. ( ア )遺伝的可能性  ( イ )相互作用  ( ウ )知能検査の成績  ( エ )学業成績

3. ( ア )環境条件    ( イ )相互作用  ( ウ )知能検査の成績  ( エ )学業成績

○ 4. ( ア )遺伝的可能性  ( イ )環境条件  ( ウ )知能検査の成績  ( エ )学業成績

5. ( ア )環境条件    ( イ )相互作用  ( ウ )学業成績     ( エ )知能検査の成績

保育士試験 平成29年(2017年)前期 保育の心理学 問95

次の文は、レディネスに関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

○ A  レディネスとは、学習の成立にとって必要な個体の発達的素地、心身の準備性を意味する。

○ B  レディネスの形成には、成熟要因と学習要因の両者がともに関連すると考えられるようになってきている。

○ C  ゲゼル(Gesell,A.L.)による成熟優位説のレディネス観は、かつての「待ちの教育」に影響を及ぼした。

× D  教育の力でレディネスそのものをつくりだすためには、教育は早ければ早いほど良いと考えられている。

  • レディネスの概念ではそれぞれに適切な学ぶタイミングがある、という考えであり、問題文のDにあるような「教育は早ければ早いほどいい」という考えは当てはまりません。

保育士試験 平成26年(2014年) 保育の心理学 問91

次の【Ⅰ群】の記述と【Ⅱ群】の人名を結びつけた場合の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。

【Ⅰ群】
( C ) 生得的に内在する能力が時期に応じて自然に展開し、発達するという考えを提唱した。

【Ⅱ群】
ア ガードナー(Gardner, H.)
イ フロイト(Freud, S.)

ウ ゲゼル(Gesell, A.L.)
エ ギブソン(Gibson, J.J.)
オ バルテス(Baltes, P.B.)

保育士試験 平成25年(2013年) 保育の心理学 問82

次の【I群】の発達の理論と【II群】の人名とを結びつけた場合の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。

【I群】
A 生得的に内在する能力は時期に応じておのずと展開していくと考え、学習ができるようになる心身の準備性があるとした。

  • ゲゼル

B 人は環境からの働きかけの受け手であり、行動は環境からの言語的指示、行動への賞・罰のフィードバックなどにより獲得されるとした。

  • ワトソン

【II群】
ア ゲゼル(Gesell, A.L.)
イ ピアジェ(Piaget, J.)
ウ バンデューラ(Bandura, A.)
エ ヴィゴツキー(Vygotsky, L.S.)
オ フェスティンガー(Festinger, L.)
カ バウアー(Bower, T.G.R.)
キ ワトソン(Watson, J.B.)

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