ソーシャル・インクルージョンって日本は世界と違うの?

ソーシャルインクルージョン

ソーシャルインクルージョンの起源?

1970年代のフランスにおいて、戦後の状況の中で、社会的に排除されている状態のことを「ソーシャル・エクスクルージョン」と呼びました。

その後1980年代に入り、ヨーロッパ全体で若者の失業が問題視され始めたとき、この「ソーシャル・エクスクルージョン」という言葉が注目され、同時にその対語としての、「ソーシャル・インクルージョン」という言葉が生まれました。

このときに使われたソーシャル・インクルージョンは、ノーマライゼーションを発展させた概念だと言われます。

ノーマライゼーシンは「障害をもつ人も、もたない人も、地域の中で普通に、当たり前に暮らせる社会」にしようとしたのに対し、ソーシャル・インクルージョンは「さまざまな個性を持つ人を、その多様性を含めて個性として、そのまま社会の中に包摂すること」としています。

誰も差別されたり排除されたりしない相互共生的な社会が構築されることが重要であるという考えに立っており、真のノーマライゼーションの姿ともいえます。

日本では2000年12月に厚生省(当時)でまとめられた「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書」にて初めて提唱されました。

そこでのソーシャルインクルージョンは、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」とされています。

ソーシャルインクルージョンは、社会的包含あるいは社会的包摂等と訳されます。

すべての人々とは、社会的格差の対象となる人たちを含み、移民、貧困者、高齢者、女性、子供、非正規雇用者、住まい、地域によるものであり、当然のことながら障害者も含まれます。

福祉の世界だけではなく、ビジネスでも使われますが、多少意味合いが違います。

ソーシャルインクルージョン事例1

ある団体では、ソーシャルインクルージョンの活動として、シングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会の実現を目指し、企業の協力を得てフルタイム正社員登用を見据えた就労支援を行っています。

日本の母子世帯の就業率は諸外国に比べ高いが、非正規雇用で働く割合が高く、低収入で貧困に陥りやすいです。

子育てに時間をとられる時期の働き方としてパート等を選ぶと、子どもが大きくなった時に教育費の負担が増えて苦労します。

子どもに手がかからなくなったからとフルタイム職に応募しても、採用されるのは容易ではありません。

そこで、ビジネス技能だけでなく、自己尊重意識を培う講義を設けています。

受講者にはもともと能力があって働く意欲の高い人が多く、前向き志向になると見違えるように成長します。

ソーシャルインクルージョン事例2

スターバックス コーヒー では、ソーシャルインクルージョンの活動として、日本で初めてオープンした“サイニングストア”を設置しました。

サイニングとは「手話」のことで、聴覚に障がいあるパートナー(店舗スタッフ)と聴者が共に働くお店です。

カフェという形で地域の暮らしに溶け込みます。

過去問

保育士試験 令和3年(2021年)前期 社会福祉 問60

次の文のうち、ソーシャル・インクルージョンに関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

× A  ソーシャル・インクルージョンは、バリアフリーの概念に代わって、アメリカの工学研究者ロナルド・メイス(Ronald Mace)によって示された概念である。

  • ロナルド・メイスは、アメリカの工学研究者で、ユニバーサルデザインの提唱者です。ソーシャル・インクルージョンの概念は、フランスが発端となり1980年代にヨーロッパで確立されたといわれています。

× B  ソーシャル・インクルージョンは、WHO憲章における「健康」の定義の中で、「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」と記述されている。

  • W H O憲章において定義されているのは、「健康」についてです。「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と定義されています。

○ C  ソーシャル・インクルージョンは、ノーマライゼーション思想とも共通し、社会福祉の理念として用いられる場合、すべての人がそれぞれの違いを尊重され、社会の一員として認められ、人権を保障されることも意味することが多い。

  • ソーシャルインクルージョンは、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」という理念です。ノーマライゼーションは、「障害者は、可能な限り社会で日々を過ごす一人の人間として、障害のない人と同じ条件のもとに置かれるべきであり、そのような状況を実現するための生活条件の改善が必要である」とする考え方です。ノーマライゼーションは、障害者に限定して用いられることが多いですが、ソーシャルインクルージョンは、障害者も含めた概念ととらえることができます。

× D  ソーシャル・インクルージョンは、抑圧され、本来持ちうる力が潜在化している状態に置かれている人々が、本来持っている力を発揮できるような機会を作り、その力を発揮できるよう支援することをいう。

  • ソーシャルインクルージョンは、Cの解説のとおり、「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」という理念です。問題文にあるような、本来持つ力を発揮できるような支援は、エンパワーメントにあたります。以上より、A:×  B:× C:○ D:×となり、正解は4となります。

1.A:○  B:○  C:×  D:○ 2.A:○  B:×  C:○  D:○ 3.A:×  B:○  C:×  D:× 4.A:×  B:×  C:○  D:× 5.A:×  B:×  C:×  D:○

正解は4

保育士試験 令和2年(2020年)後期 社会福祉 問57

次の文のうち、社会福祉の基本理念に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 北欧に起源をもつノーマライゼーション( normalization )の思想は、日本の社会福祉分野の共通基礎理念として位置付けられることが多い。
B ユニバーサルデザイン( universal design )という考え方の一つに、どのような人にとっても役立つように使えるということが挙げられている。
C QOL( Quality of Life )という言葉が社会福祉分野で使われるようになったのは、日本では、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」が制定されてからのことである。

A ○
1950年代にデンマークで提唱された
ノーマライゼーションの考え方は、
次第に世界へ広がってゆき、
1970年代には国連でも
取り上げられるようになりました。
日本においても福祉の基本的な概念の
一つとなっています。

B ○
ユニバーサルデザインは、
もともとメイスにより提唱された考え方で、
全ての人々にとって
魅力的かつ機能的となるような
デザインのあり方をさします。

C ×
Quality of Life(QOL)という言葉は、
1960年代にアメリカで使われはじめ、
日本では1990年代には
使われるようになっていました。

「障害者の日常生活及び社会生活を
総合的に支援するための法律」は、
当初「障害者自立支援法」として
2005(平成17)年に制定され、
2012年に現在の名称になりました。

× D ソーシャルインクルージョン( social inclusion )とは、カナダ及びオーストラリア地域で普及してきた理念であり、「社会的包括」あるいは「社会的包摂」等と訳されることがある。

  • ソーシャルインクルージョンとは、「社会的包括」あるいは「社会的包摂」などと訳されています。1980年代頃にヨーロッパでおこった考え方だといわれています。

1.A:○  B:○  C:×  D:○ 2.A:○  B:○  C:×  D:× 3.A:○  B:×  C:○  D:○ 4.A:×  B:○  C:○  D:○ 5.A:×  B:×  C:○  D:×
正解は 2

保育士試験 平成28年(2016年)後期 社会福祉 問76

次の文は、相談援助等に関する専門用語についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A  フェースシートとは、利用者の氏名、住所、家族構成、健康状態、主訴等の概要が一目で理解できるように記録されたものである。
B  スーパービジョンとは、援助者が、専門的な助言や知識を必要とするとき、主に外部の専門家から助言等を受けることである。
C  生活モデルとは、社会福祉援助活動に生態学的な考え方を取り入れたもので、人と環境の相互作用を取り入れたアプローチである。

A ○  
記述の通りです。
利用者本人の基本情報、生活背景がわかる情報を記載します。

B ×  
指導者(スーパーバイザー)から助言を受けます。

C ○  
記述の通りです。
一方、疾病対応を中心としたアプローチである「医療モデル」という考え方もあります。
近年では、「生活モデル」を軸に、利用者の生活の質を高めることが課題とされています。

○ D  ソーシャルインクルージョンとは、社会的包含あるいは社会的包摂等と訳され、社会的に排除されやすい人々を地域社会の中で支え合い、助け合いながら暮らしていこうとする考え方である。

  • 障害者らを社会から排除するのではなく、地域社会の中でともに助け合って生きていこうという考え方です。

E ○
記述の通りです。
ジェノグラム:一般的に「家系図」にあたるものです。利用者を中心とした家族関係を理解するために作成されます。
エコマップ:利用者、家族、社会資源の関係性を図示。相互関係をネットワークとしてとらえるものです。
ファミリーマップ:家族関係を図示。家族のコミュニケーションや力関係、情緒的な結びつきを単純化してとらえます。

以上のことから、正解は 3 です。

E  マッピング技法では、ジェノグラム、ファミリーマップ、エコマップ等がある。 1.( A )○  ( B )○  ( C )×  ( D )×  ( E )○ 2.( A )○  ( B )○  ( C )×  ( D )×  ( E )× 3.( A )○  ( B )×  ( C )○  ( D )○  ( E )○ 4.( A )×  ( B )○  ( C )○  ( D )○  ( E )× 5.( A )×  ( B )×  ( C )○  ( D )○  ( E )○(
×
正解は 3

保育士試験 平成29年(2017年)後期・地域限定 社会福祉 問62

次の文は、社会福祉の基本理念に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A  北欧に起源をもつノーマライゼーション( normalization )の思想は、わが国の社会福祉分野の共通基礎理念として位置付けられることが多い。
B  ユニバーサルデザイン( universaldesign )という考え方のひとつに、どのような人にとっても役立つように使えるということが挙げられている。
C  QOL( QualityofLife )という言葉が社会福祉分野で使われるようになったのは、わが国では、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」が制定されてからのことである。

× D  ソーシャルインクルージョン( socialinclusion )とは、カナダ及びオーストラリア地域で普及してきた理念であり、「社会的包括」あるいは「社会的包摂」等と訳されることがある。

  • ソーシャルインクルージョン( socialinclusion )は、1980年代にヨーロッパで発展した概念で、障害者を隔離・排除するのではなく、共生を目指すものです。

1.A:○  B:○  C:×  D:○ 2.A:○  B:○  C:×  D:× 3.A:○  B:×  C:○  D:○ 4.A:×  B:○  C:○  D:○ 5.A:×  B:×  C:○  D:×( )訂正依頼・報告はこちら
×
正解は 2Aは○です。

Bは○です。

Cは×です。
QOL( QualityofLife )という概念は、1970年代より注目されています。
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」が制定されたのは2005年であるので、この問題文は間違っていると言えます。

ソーシャル・インクルージョンって日本は世界と違うの?」に2件のコメントがあります

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