
戦後の児童福祉法が新設以来の大改正が行われましたが、直後に3つの大きな事件が起きてしまいます。
- 札幌市の事件
- 目黒区の事件
- 野田市の事件
札幌市で2歳の女の子が虐待を受けて死亡した事件
母親は未婚の18歳で出産し、札幌市は産前・産後の支援が特に必要な「特定妊婦」と認定していましたが、母親と市の関わりは次第に薄れていきました。
当時、母親は交際している相手がいました。
ある時、「子どもの泣き声がする」と住民から110番通報があり、警察から児童相談所に連絡かありました。
これは3度目にあたる虐待が疑われる情報でした。
警察は児童相談所に面会への同行を要請しましたが、児童相談所は深夜で1人の当直体制であることを理由に断っていました。
その後、警察官がマンションに出向き、女の子の身体にあざが2か所あることを確認したものの虐待を見抜くことはできませんでした。
母親と交際相手は逮捕され、その後女の子は死亡してしまいました。
母親は「物を触ったことを注意したら態度が悪かった」「物入れに閉じ込めたのはしつけのつもりだった」などと話していました。
虐待を専門とする職員が立ち会っていれば、何らかの対応ができた可能性があります。
また、札幌市では、夜間や休日に虐待の通告があった場合は、児童家庭支援センターに連絡し、センターが対応することになっています。
ところが児童相談所も警察もセンターには連絡せず、仕組みが生かされてなかった形です。
東京・目黒区で5歳の女の子が虐待を受けて死亡した事件
母親は19歳で女の子を出産した後に離婚し、別の相手と再婚して長男を出産しました。
女の子は新しい父親による虐待により、日常的に暴力を受け、食事も十分に与えられませんでした。
女の子は当時住んでいた香川県の児相に2回一時保護されました。
初回は約1カ月、2回目は3カ月余りで保護が解除されました。
警察は2度父親を傷害容疑で書類送検しましたが、いずれも不起訴となりました。
その後一家は東京都目黒区に転居しました。
転居先の目黒区の子ども家庭支援センターが善通寺市からの引継ぎを受け、関わりが始まりました。
また、東京都の品川児童相談所は、香川県の児童相談所からの引継ぎを受け、虐待として受理しました。
品川児童相談所が家庭訪問しましたが、母親に拒否されて児相は保護者との信頼関係が崩れてるのを恐れてしまい、強制的に女の子には会うことはしませんでした。
その後119番通報で当該児童が救急搬送され、その後、死亡が確認されました。
香川県善通寺市から目黒区の子ども家庭支援センター及び碑文谷保健センターへの引継ぎに比べ、香川県の児童相談所から東京都の品川児童相談所への引継ぎが遅かった。
子ども家庭支援センターと品川児童相談所で直ちに連携した対応ができませんでした。
香川県の医療機関からは直接品川児童相談所へ情報提供がなされているが、こうした情報を緊急性が高い状況にあるとの判断には活かされませんでした。
千葉県野田市で小学4年生の女の子が虐待を受けて死亡した事件
女の子が2歳の時に両親が離婚。夫の家庭内暴力が原因だったが、2人は再婚しました。
一家は妻の故郷である沖縄県糸満市で暮らし、次女が生まれました。
その後父親による妻に対するDV、女の子への恫喝(どうかつ)の情報が市に寄せられましたが、父親は糸満市の家庭訪問の要請を拒みました。
その後、一家は千葉県野田市へ転居しました。
転校先の学校で女の子は学級委員に立候補するなど、活発に学校生活を送っていたように見えましたが、「お父さんに暴力を受けています」といじめに関する小学校のアンケートに記入。
児童相談所が一時保護しましたが、親族宅で暮らすことなどを条件に保護を解除しました。
しかし、父親からアンケートの写しの提供を求められた学校は、本人の同意がないことを理由に提供を拒みましたが、3日後、父親が本児の同意書を持参し父親の威圧的な要請を拒み切れずに、市の教育委員会がアンケートのコピーを渡してしまいました。
児童相談所は、母子が父親のもとに戻ったことを把握したものの、再度の一時保護を行いませんでした。
一家はさらに野田市内の別の小学校へ転校しました。女の子は父親に満足な食事や睡眠を取れないまま、長時間立たされたり、何度も冷水を浴びせられました。
その後、女の子は自宅で死亡。
母親は止めることをしませんでした。
自分もDVを恐れていたからだとされまいす。
過去問
保育士試験 令和3年(2021年)前期 子どもの保健 問99
次のうち、児童虐待に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 児童虐待は、「児童福祉法」によって定義がなされている。
B 児童虐待とは、法律上は保護者が監護する児童について行う身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待という行為である。
○ C 家庭内におけるしつけとは明確に異なり、懲戒権などの親権によって正当化されない。
D 児童虐待の通告の対象は、「児童虐待を受けたと思われる児童」である。 1.A:○ B:○ C:○ D:○ 2.A:○ B:○ C:× D:× 3.A:○ B:× C:○ D:× 4.A:× B:○ C:○ D:○ 5.A:× B:× C:× D:○( )訂正依頼・報告はこちら
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正解は 4A:×です。
「児童虐待の防止等に関する法律」に定義されています。
B:○です。
記述の通りです。
児童虐待には、
①身体的虐待
②性的虐待
③ネグレクト
④心理的虐待
があります。
C:○です。
記述の通りです。
D:○です。
児童虐待の通告の対象は、「児童虐待を受けたと『思われる』児童」です。
「児童虐待を受けた児童」ではありません。
保育士試験 平成31年(2019年)前期 社会的養護 問30
次の文は、「児童福祉法」及び「児童虐待の防止等に関する法律」における、平成28年の改正内容に関する記述である。適切な記述を一つ選びなさい。
× 1.市町村から児童相談所への事案送致を新設した。
- 人不足のために新設されたのは児童相談所から市町村への事案送致です。
2.市町村が設置する児童福祉審議会の調整機関について、専門職を配置しなければならないとした。 3.一時保護中の18歳以上の者等について、22歳に達するまでの間、新たに施設入所等措置を行えるようにした。
○ 4.児童虐待の疑いがある保護者に対して、再出頭要求を経ずとも、裁判所の許可状により、児童相談所による臨検・捜索を実施できるものとした。
5.児童虐待の発生予防に資するため、都道府県は、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行う母子健康包括支援センターの設置に努めるものとした。( )訂正依頼・報告はこちら
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正解は 41は不適切です。
2は不適切です。
市町村が設置する要保護児童対策地域協議会の調整機関について、専門職を配置しなければならないとしました。したがって問題文の「児童福祉審議会」という箇所は誤りです。
3は不適切です。
「一時保護中の18歳以上の者等について、20歳に達するまでの間、新たに施設入所等措置を行えるようにするとともに、その保護者に対する面会・通信制限等の対象とする」と定められました。
4は適切です。
児童虐待防止法の第8条、第9条において規定されました。
5は不適切です。
母子健康包括支援センターの設置に努めると規定されたのは、都道府県ではなく市町村です。
「児童福祉法改正 〜2016年大改正直後のあの虐待事件!〜」への1件のフィードバック