エレン・ケイ著書「児童の世紀」
エレン・ケイは、スウェーデンの名門で、自由主義政治家の下に育ちますが、ほとんど学校へ通わず、読書と知識人らとの交友を通じて自己の思想を確立しました。

子供は、大人の所有物、ただの労働力、教育なんてなかった時代の著書です。
エレン・ケイは1900年に教職に就く傍ら「児童の世紀」を世に出しました。
教育の最大の秘訣は、教育しないことにある。
自然を自然のあるがままに任せ,自然本来の仕事を助けるために周囲の状態に気を配るれば、子どもは自ずと成長するのであって,余計なことはしない方がよいということです。
これはルソーの思想を受け継いでおり、こどもの自発的な学びを重視する考えを主張しました。(児童中心主義)
20世紀こそ児童の世紀として子どもが幸せに育つことのできる平和な社会を築くべきである。
子どもが教育を受ける権利を享受することによって主体的に育つ可能性を示しました。
大人のひな形ではない独自な存在としての子どもへの関心を高め、教育を通してそのような子どもの権利が保障されることに大きな期待をかけました。
「児童の世紀」は各国語に翻訳されて世界的な注目を集めました。

エレン・ケイの女性開放運動
母性は子どもの成長に必要なものであるとし、母性の重要性も示しました。
女性が母性を発揮することは,男性が労働で生産性を上げるのと同様の意味を持つとしました。
女性を不当な社会的束縛から解放し、女性に対する差別や不平等を解消しようとする女性開放運動に繋がりました。
ケイの著作は、大正デモクラシー期の日本にも、女性文芸誌などを通して紹介され、日本の婦人運動に絶大な影響をもたらしました。
児童の権利に関する条約へ
児童の世紀は、やがてジュネーブ宣言へつながり、児童の権利に関する条約になりました。

過去問
保育士試験 令和3年(2021年)前期 子ども家庭福祉 問44
次の文は、「児童の権利に関する条約」第3条の一部である。( )にあてはまる記述として正しいものを一つ選びなさい。
児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、( )。
× 1. 保護者の意向が主として考慮されるものとする
× 2. 親権が主として考慮されるものとする
× 3. 児童の意向が主として考慮されるものとする
○ 4. 児童の最善の利益が主として考慮されるものとする
× 5. 父母の同意を得るものとする
保育士試験 令和3年(2021年)前期 子ども家庭福祉 問41
次のうち、人物と関連の深い事項の組み合わせとして適切な組み合わせを一つ選びなさい。
× C コルチャック(Korczak, J.) ―『児童の世紀』
- 児童の世紀』は1990年にスウェーデンの女性思想家エレン・ケイによる著書です。
保育士試験 平成30年(2018年)前期 児童家庭福祉 問42
次の文は、子ども観の変遷に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
○ 1.エレン・ケイ( Key,E. )は、1900年に著した『児童の世紀』において、子どもが教育を受ける権利を享受することによって主体的に育つ可能性を示した。
保育士試験 平成29年(2017年)後期・地域限定 保育原理 問18
次の【Ⅰ群】の記述と【Ⅱ群】の人名を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【Ⅰ群】
A スウェーデン生まれの思想家で、自らの女性観と関連づけて新しい児童教育を提案し、代表作である『児童の世紀』( 1900年 )においては、 女性( 母性 )と児童を保護するための立法を要求した。
- エレン・ケイ
【Ⅱ群】
ア エレン・ケイ( Key,E. )
イ オーエン( Owen,R. )
ウ シュタイナー( Steiner,R. )
エ ヘファナン( Heffernan,H. )
保育士試験 平成29年(2017年)前期 教育原理 問23
次の文の著者として、正しいものを一つ選びなさい。
わたしたちは、わたしたちの意志と選択とは無関係に、わたしたちの先祖を通して、わたしたちの生命の一番奥の基礎となる運命が決っているのを知っている。わたしたちが自分でつくる子孫を通して、わたしたちはある程度は自由な存在として、種族の運命を決めることができるのである。
人類がすべて、これを全く新しい見方で認識しはじめ、これを発展の信仰の光のなかに見て、20世紀は児童の世紀になるのである。これは二重の意味をもっている。一つは、大人が子どもの心を理解することであり、一つは、子どもの心の単純性が大人によって維持されることである。そうなって初めて、古い社会が新しくなる。
○ 4.エレン・ケイ(Key,E.)
保育士試験 平成28年(2016年)前期 社会的養護 問30
次の文は、欧米の社会的養護の歴史に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ C エレン・ケイ(Key, E.)は、1900年に著した『児童の世紀』で、20世紀こそ児童の世紀として子どもが幸せに育つことのできる平和な社会を築くべきであると主張した。
保育士試験 平成25年(2013年) 児童家庭福祉 問42
次の【I群】の児童家庭福祉の理念や思想に大きな影響を与えた人物と【II群】の業績を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【I群】
A ルソー (Rousseau, J.-J.)
B フレーベル (Frobel, F.W.)
C オーウェン (Owen, R.)
D エレン・ケイ (Key, E.)
E コルチャック (Korczak, J.)
【II群】
工 「児童の世紀」の著者。
保育士試験 平成24年(2012年) 保育原理 問102
次の文は、保育の発展に寄与した人物とその主な功績についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ E エレン・ケイ(Key.E.)は、スウェーデンの女性解放運動家であり教職に就く傍ら多くの著作を世に出した。代表作に「児童の世紀」がある。
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