ヴィゴツキーの視覚による覚え方 天才心理学者の世界

ヴィゴツキーは早熟の天才

ヴィゴツキーは裕福なユダヤ人家庭に生まれました。

旧ソビエト連邦でふたつの大学を同時に21歳で卒業しました。

大学卒業後、中学校、師範学校、演劇学校で教師をして学生たちの人気を集めました。

その後、本格的に心理学の研究に入りました。

あくなき研究意欲と旺盛な活動

すヴィゴツキーのもとに多数の優秀な学生が集まり、彼の指導のもとに心理学の実験的研究が行われました。

心理学のモーツァルト」とも称されるように、心理学者と一括りにできないほどに、多くの研究を行いました。

29歳で論文を完成させ学位を取ると、ソビエトの心理学界にデビューし、たちまち有名になりました。

政府からも重要視されました。

しかし、スターリンの息子が、知能テストによって低く評価された後、それを作成した児童学者への批判が集中してきました。

ヴィゴツキー

発達の最近接領域

自分一人では学習を完成させられないが、大人の援助や指導(精神間機能があれば、学習できる領域を「発達の最近接領域」と呼びました。

ラン-タンHP

ヴィゴツキーの著書の訳し方によっていろいろな言葉の表現があり、保育士試験では言葉を選ばなければならない問題が何回か出題されました。

紛らわしいので同じ意味の表現を認識しておきましょう。

既に完成した水準=自力で遂行可能な能力のレベル=現在の発達レベル

大人の援助や指導があればできる=成熟しつつある水準=潜在的な発達レベル

ヴィゴツキーの内言とは

思考手段としての言語であり、声に出さずに自分の内にとどめておく言語が内言です。

内言

例えば、3,4歳では思考手段としての言葉を口に出してしまいますが、内言ができるようになると口に出さずに考えることができます。

口に出してしまった言葉がひとりごと、つまり外言であり、内言への移行途中のものです。

子どもの認知能力はどうやって発達していくの?

子どもの認知能力は、日常の生活経験を通して自然に獲得する生活概念と、主に学校で教育される科学的概念が相互に関連をもちながら発達していきます。

事例

女の子Mにとって、「兄弟」とは実際の喧嘩ばかりしている兄のことをイメージします。

しかし、「兄弟」自体がどのような定義かは正しく自覚していません。(生活的概念)

Mは学校で、兄弟とは「 片親または両親を同じくする男の子供たち。兄と弟。また、その間柄。」と先生から教わりました。(科学的概念)

「兄弟」とは、自分の兄だけでなく友達の兄も含み、さらに弟も含まれることがわかりました。

社会構成主義とは?ピアジェと比較?

ヴィゴツキーの最近接領域という考え方が、社会構成主義に発展しました。

教育的働きかけはこの範囲に対してなされなければ子どもの発達に貢献できないし、また、教育は発達の最近接領域をつくりだすように配慮しなければならないといいます。

ピアジェは個人の範囲の学習を考える構成主義でした。

これと似た言葉の関係に、倉橋惣三の児童中心主義と城戸幡太郎の社会中心主義があります。

さらに持病の結核に悩まされながら

ヴィゴツキーは37歳で死去しました。

晩年は膨大な仕事をこなしつつ,死の直前まで研究に没頭しました。

死後、ブルーナーから再評価を受けて人気が上昇し、今日も影響力を持ち続けています。

過去問

保育士試験 令和4年(2022年)後期 保育の心理学 問6

次のうち、ヴィゴツキー(Vygotsky, L.S.)が指摘した事柄に関する記述として、適切なもの を○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A 子どもは環境の中に埋め込まれている情報を見出しながら行動を起こしており、環境は子どもが
関わるものにとどまらず、環境が子どもに働きかけている。

○ B 子どもの発達には、他者の援助がなくても独力で達成できる水準と、他者の援助があれば達成できる水準の2つがあり、他者との関わり合いの中で発達は促されていく。
○ C 子どものひとりごとは、他者に向かうコミュニケーションのための言葉が、自分に向かう思考のための言葉となっていく過程で現れる。
○ D 子どもの概念は、日常の生活経験を通して自然に獲得する生活概念と、主に学校で教育される科学的概念が相互に関連をもちながら発達していく。

(組み合わせ)
A B C D
4 × ○ ○ ○

保育士試験 平成30年(2018年)後期 保育の心理学 問6

次のうち、ヴィゴツキー(Vygotsky, L.S.)が指摘した事柄に関する記述として、適切なもの を○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

× A 子どもは環境の中に埋め込まれている情報を見出しながら行動を起こしており、環境は子どもが
関わるものにとどまらず、環境が子どもに働きかけている。

  • ギブソンの指摘です。

○ B 子どもの発達には、他者の援助がなくても独力で達成できる水準と、他者の援助があれば達成できる水準の2つがあり、他者との関わり合いの中で発達は促されていく。

○ C 子どものひとりごとは、他者に向かうコミュニケーションのための言葉が、自分に向かう思考のための言葉となっていく過程で現れる。

○ D 子どもの概念は、日常の生活経験を通して自然に獲得する生活概念と、主に学校で教育される科
学的概念が相互に関連をもちながら発達していく。

保育士試験 平成30年(2018年)後期 保育の心理学 問11

次の文は、ある発達理論に関する記述である。( A )〜( E )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。

教育と心的機能の発達の相互作用に関する理論の中で、( A ヴィゴツキー )は、2つの発達水準を区別することができると提唱した。すなわち、問題解決の場面で子どもが自力で解決できる既に( B 完成した )水準と、大人の援助や指導によって解決が可能となる( C 成熟しつつある )水準である。この2つの発達水準の差の範囲を( D 発達の最近接領域 )と呼んだ。( E 教育的働きかけ )はこの範囲に対してなされなければ子どもの発達に貢献できないし、また、教育は( D 発達の最近接領域 )をつくりだすように配慮しなければならない。

【語群】
ア:キャンポス(Campos, J.J.)
イ:ヴィゴツキー(Vygotsky, L.S.)
ウ:成熟しつつある  エ:完成した
オ:誘導的働きかけ  カ:発達の最近接領域
キ:教育的働きかけ  ク:固有の知識領域

保育士試験 平成25年(2013年) 保育の心理学 問84

次の文は、子どもの認知的発達についての記述である( A )~( D )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の最も適切な組み合わせを一つ選びなさい。

・ヴィゴツキー(Vygotsky, L.S.)によると、活動に熱中している時に発する子どもの「ひとりごと」は、思考のための言葉、つまり( C 内言 )への移行途中のものである。

【語群】
ア 顔認識    イ アニミズム  
ウ 内言     エ 物の永続性
オ 保存の概念  カ 象徴機能  
キ 外言     ク 言語機能

保育士試験 平成24年(2012年) 発達心理学 問1

次の文は、ヴィゴツキー(Vygotsky,L.S.)の発達理論に関する記述である。( A )~( E )にあてはまる語句を【語群】から選択した場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

子どもの認知発達は、2つのレベルで行われる。1つは、( A 現在 )の発達レベルで、他者の助力なしに、自力で遂行可能な能力のレベルである。もう1つは、( B 潜在的 )な発達レベルで、大人や仲間の援助を受け入れて問題解決が可能となる能力のレベルである。この2つのレベルの間の領域を( C 発達の最近接領域 )という。認知発達は、コミュニケーションを基盤とした( D 精神間機能 )から、( E 内面化 )した機能への移行過程である。

【語群】
ア 過去        イ 外面化
ウ 顕在的       エ 精神外機能
オ 発達の最近接領域  カ 発達の最接近領域
キ 現在        ク 潜在的
ケ 内面化       コ 精神間機能

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