読み方は「かいばらえきけん」です。
京都をめぐる江戸時代のガイドブック「京城勝覧」は江戸時代のベストセラーです。保育士試験とは関係ありませんが、そんな書を書いた貝原益軒の記事です。

目次
- 著書「和俗童子訓」
- 幼児教育
- 家庭教育
- 随年教法
- 著書「養生訓」
- 過去問
1.著書「和俗童子訓」
「和俗」とは、日本に昔から行われている風習や、昔から伝えられている言いならわしのことです。
「童子訓」とは、育児書という意味です。

・ 幼児教育
〈原文〉
予(あらかじめす)とは、かねてよりといふ意(こころ)。小児の、いまだ悪にうつらざる先に、かねて、はやくをしゆるを云(いう)。はやくをしえずして、あしき事にそみならひて後は、おしえても、善にうつらず。いましめても、悪をやめがたし。古人は、小児の、はじめてよく食し、よく言(ものいう)時よりはやくおしえしと也。
〈要約〉
予(あらかじ)めとは、かねてよりという意味で、子どもにまだ悪がうつらないうちに前もって教えることをいう。早く教えないでおいて悪いことに染まり、習慣になったあとからでは教えても善にならない。戒めても悪をやめにくい。古人は子どもがはじめてものを食べ、はじめてものの言える時から早く教えたということである。
貝原益軒は、人間にはもともと善の端緒がそなわっており、それを発展させれば徳になるという性善説の立場であることがわかります。
・ 家庭教育
〈原文〉
凡小児のあしくなりぬるは、父母、乳母、かしづきなるる人の、をしえの道しらずして、其あしき事をゆるし、したがひほめて、其子の本性をそこなふゆへなり。
〈要約〉
すべて子供が悪くなるのは、父母、乳母など世話をする人が、教えるべき道を知らずに、悪い事を許して褒めてしまい、その子の本性を損なってしまうからである。
・随年教法
〈原文〉
七歳、是より男女、席を同してならび坐せず、食を共にせず。此ころ、小児の少知いでき、云事をきき知るほどならば、英知をはかり、年に宣しきほど、やうやく礼法を教ゆべし。又、和字のよみかきをも、習はしむべし。
〈要約〉
七歳、この年から男女は、席を並べて座らせず、食事を一緒にさせない。この頃には、子どもに少しばかり知恵が出て、言う事を理解できるようであれば、その子の英知を見て、年齢に合わせて少しずつ礼法を教えるべきである。また、仮名の読み書きも、習わせるべきである。
子どもの年齢に応じた教授法と教材の配列(カリキュラム)が示されています。
2.著書「養生訓」

人が最後まで生きる極意が記されてあり、健康本、一般向けの食事法等の生活心得書です。
〈原文〉 名言!
人の身は父母を本とし、天地を初めとす。
天地父母のめぐみをうけて生まれ、
また養われたるわが身なれば、
わが私のものにあらず。
天地の御賜物(みたまもの)、
父母の残せる身なれば、
つつしんでよく養いて、
損ないやぶれず。
〈要約〉
そもそも人間は、天地の恵みを受け、
両親のもとに生まれてきます。
ですからこの身は
自分だけのものではありません。
天地と両親からいただいた尊いからだであるから、
つつしんで大切にして、
天寿をまっとうできるようにこころがけなければなりません


過去問
保育士試験 令和2年(2020年)後期 教育原理 問22
次の【Ⅰ群】の記述と【Ⅱ群】の人物を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【Ⅰ群】
A 江戸時代に幼児教育や家庭教育の大切さを指摘した。『和俗童子訓』を著した。
【Ⅱ群】
ア 貝原益軒
保育士試験 平成31年(2019年)前期 教育原理 問25
次の【Ⅰ群】の記述と、【Ⅱ群】の人名を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【Ⅰ群】
C 「人の性は本善」であるという性善説の立場であった。「和俗童子訓」を著した。
【Ⅱ群】
ア 貝原益軒
保育士試験 平成24年(2012年) 教育原理 問123
次の文は、日本人の教育思想に関する記述である。正しいものを○、誤ったものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
○ B 貝原益軒は、『和俗童子訓』において「年ニ随ッテ教ノ法」(随年教法)を説いたが、これは子どもの年齢に応じた教授法と教材の配列を示した教育課程論である。