個別援助技術はもちろんのこと、集団援助技術においては利用者同志にも活用されます。
またこの原則はあくまでも原則であるため、人命に関わるようなことや、法に触れることがあった場合は、援助者が判断して適切な行動をとります。

①個別化の原則
利用者を他の利用者と比べることなく,理解することです。
【事例】
T保育士は、児童養護施設で勤めはじめて2か月の新任です。
T保育士が担当するM君(9歳)は、N君(7歳)に対して怒鳴って言うことをきかせようとしたり、N君の持ち物を壊したりすることが多くあります。
しかし、T保育士はM君のことを性格が乱暴な子どもであると決めつけないように心がけました。
②意図的な感情表現の原則
利用者が感情を表現できるようにすることです。
【事例】
ある日、T保育士は、M君自身が自らを取り巻く状況を客観的に見て気づきを得られるよう誰もいない場所で問いかけをしました。
M君は両親のことを話し始めると、泣き出してしまい、T保育士はひたすら「うん、うん」と相槌を打ちます。
M君は泣いて感情を表現したことにより、緊張や不安から解放されたのか、しばらくN君に怒鳴りつけることはしませんでした。
③統制された情緒的関与の原則
援助者が自分の情緒をコントロールすることです。
【事例】
T保育士は自分の感情をきちんと自覚できているか自問自答し、過度に感情移入をしないよう心掛けました。
④受容の原則
利用者を受け止めることです。
【事例】
T保育士は、M君の考えはM君の経験や必死の思考から来るもので、個性ととらえました。
「そんなことがあったんだね。」と言うと、M君は自分の感情を受け止めてもらえたと感じました。
⑤非審判的態度の原則
利用者を審判する(白黒つける)態度をとらないということです。
【事例】
T保育士は、N君への態度がよいとも悪いとも考えず、またそのような態度もとりませんでした。
⑥利用者の自己決定の原則
利用者の問題解決は利用者が選んで決めるということです。
【事例】
M君が自らの問題を解決できるよう、T保育士は、N君への態度の善悪をM君自身が行うよう働きかけました。
⑦秘密保持の原則
利用者の個人的情報・プライバシーはもらさないことです。
【事例】
T保育士は、後日にM君の保護者面談において、親に言ってほしくないこと「〇〇ちゃんが好き」「おもらしをしてしまった」などに気を付け、面談を行いました。
また、面談内容が外部に漏れないようパスワードをつけてパソコンに保管しました。

過去問
保育士試験 令和元年(2019年)後期 保育実習理論 問156
次の【事例】を読んで、【設問】に答えなさい。
【事例】
T保育士は、児童養護施設で勤めはじめて2か月の新任である。T保育士が担当するM君(9歳)は、N君(7歳)に対して怒鳴って言うことをきかせようとしたり、N君の持ち物を壊したりすることが多くある。T保育士はその都度、注意するが、M君は全く素直に応じることがなく、反発する。ある時、こうした反抗的な態度に対してT保育士はとても腹を立て、声を荒げた。その様子を見ていた主任保育士はT保育士に対するスーパービジョンの際、「専門職としてあなた自身が自らの感情を自覚し理解する必要があるのではないか」と述べた。
【設問】
次のうち、主任保育士の発言が示唆している内容を、バイスティックの7原則にあてはめた場合の最も適切なものを一つ選びなさい。
× 1. 個別化
- 個別化とはクライエントを一個人としてとらえることです。
× 2. 受容
- 受容とはクライエントをありのままに受けとめ、批判をしないことです。
× 3. 意図的な感情の表出
- 意図的な感情表現とは、クライエントの感情表現を大切にすることです。
○ 4. 統制された情緒的関与
- 統制された情緒的関与とは、援助者は自分の感情を自覚し、調整することです。
× 5. 自己決定
- 利用者の自己決定とは、クライエントが自身の意思による自己決定をできるように促し、尊重することです。
保育士試験 平成30年(2018年)後期 社会福祉 問72
次の文は、バイスティックによる相談援助の原則に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
× A 「自己決定の原則」とは、来談者の判断に誤りがあったとしても、それを指摘せず、来談者の決定に従うというものである。
- 「自己決定の原則」とは、「あくまでも自らの行動を決定するのはクライエント自身である」とする考え方です。クライエントの決定に従うのではなく、クライエントの意見を尊重するという考え方になります。
× B 「秘密保持の原則」とは、本人や他者の生命や身体を保護するために必要な場合であっても、来談者からの相談で知りえた情報を来談者の了解なく部外者に伝えることはしてはならないというものである。
- 「秘密保持の原則」とは、クライエントの個人的情報・プライバシーは絶対に他方にもらしてはならないとする考え方です。これは他方に漏れた情報が使われ方によってクライエントに害を成す可能性があるために定められた考え方で、虐待が疑われる場合は子どもの生命に危険、子どもの人権を著しく侵害するものなので通告義務のほうが優先されます。
× C 「受容の原則」とは、相談当初においては来談者の言うことをすべて肯定するよう努めなければならないというものである。
- 「受容の原則」とはクライエントの考えは、そのクライエントの人生経験や必死の思考から来るものであり、クライエント自身の『個性』であるため「決して頭から否定せず、どうしてそういう考え方になるかを理解する」という考え方です。相談を受ける側はクライエントの意見を肯定したり否定したりするのではなく、それを受け入れ共感することが大切です。
○ D 「非審判的態度の原則」とは、問題の発生の原因に対して、来談者にどの程度責任があるか、あるいは、道徳的にどんな罪があるかと、決めつけることを排除するというものである。
- 適切な記述です。あくまでもワーカーは補佐であり、現実にはクライエント自身が自らのケースを解決せねばならないため、その善悪の判断もクライエント自身が行うのが理想とされます。
保育士試験 平成29年(2017年)前期 社会福祉 問75
次の文は、集団援助技術に関する記述である。不適切な記述を一つ選びなさい。
○ 3. 保育所の5歳児クラスにおいて、保育士は集団援助技術を適用して、メンバー同士の受容や協力関係を利用して、子どもたちの成長・発達を意図することは可能である。
○ 5. 集団援助技術においても、個別化の原則は遵守されるべきである。